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スペイン、ポルトガルで干ばつの影響が深刻化(EU)

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干ばつに対する支援策を要請

 EU閣僚理事会は2月21日、スペインとポルトガルが深刻な干ばつにあり、飼料作物などの生育に影響が出ているという両国代表団から提出された報告を発表した。
 これによるとスペイン、ポルトガルの両国では、21年11月以来、降水量が平年を大きく下回って推移し、また、気温も例年に比べて高いことから全般的に干ばつの状態にあるとしている。特に、南部での土壌水分の不足が作物の生育に影響を及ぼしている。さらに、両国の気象庁は、今後の気象予報として、いずれも降水量が平年を下回る一方で、気温は平年を上回るとしており、予報通りの天候で推移した場合には、さらなる状況の悪化が懸念されている。また、両国のダムの貯水率は大幅に減少しており、ポルトガルでは、水量制限などから灌漑への割当量が例年の3割程度にまで減少しており、飼料作物への影響が危惧されている。
 畜産分野では、飼料生産の減少に加え、エネルギーや肥料などのコスト上昇から既に生産者は厳しい状況に直面しており、さらに、今後数カ月間は前例のない状況が続くと予想している。このため、特に、家畜の給水と給餌に関し、干ばつの影響を最小限に抑えるための財政支援などの対策の検討が急務であるとした。

具体的な支援策

 両国は、直接支払制度の前払い率の引き上げや生態系バランスの維持を目的とした休耕地への放牧利用の承認などを要請している。
 現地報道によると、欧州委員会の農業・農村開発総局はすでにスペイン、ポルトガルの関係機関と連絡をとり、今回の影響に対して共通農業政策(CAP)の直接支払い、農村開発プログラムなどの組み合わせの中でどのような支援が出来るかを確認しているとのことである。また、両国が個別に独自の対策を行うことや経済に深刻な影響を及ぼす自然災害が起きた場合に加盟国が支援を申請できる欧州連合連帯基金(注)の活用について言及している。

(注)2002年夏に中欧で発生した大洪水への対応として創設された基金。大規模な自然災害による影響を受けた被災地域への支援に使用され、創設以来、洪水、森林火災、地震、暴風雨、干ばつなど災害時に活用されてきた。

スペイン生産者団体、干ばつの被害を警告

 スペインの小規模農業畜産業者連合(UPA)は3月2日、深刻な干ばつに対して畜産農家への政府による緊急支援が必要であるとするプレスリリースを発表した。同連合は、スペイン南部で深刻な干ばつの状況にあり、22年には大規模な畜産農家で生産が減少するかもしれないと指摘している。また、今後、干ばつにより牧草が減少した場合には、減少分を購入飼料で補う必要があるものの、飼料価格はすでに高騰しておりコスト上昇を招いているとした。また、地域によっては、すでに家畜に与える水の供給に問題が出てきており、そのため、水を運んだり、新しい井戸を発掘したりしなければならないとした。
 なお、スペインで生産される豚の約65%は、干ばつの影響が比較的小さい北東部で飼養されているものの、水不足に加えて、飼料費・光熱費の高騰で経営は厳しいものとなっている。
【小林 智也 令和4年3月14日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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