欧州委員会は3月10日付けのプレスリリースで、豚肉に関するワーキンググループを設置したことを公表した。設置の背景として、EUの豚肉部門は、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)拡大防止に伴う外食産業などの営業制限に加え、中国向け輸出の減少、EU域内でのアフリカ豚熱の発生、生産コストの上昇などいくつものマイナス要因が重なり、価格の下落など深刻な困難に直面していることがある。また、これらの状況に加えて、ロシアによるウクライナへの侵攻で、家畜飼料や新たな豚肉の輸出先確保の必要性が生じたことで、さらなる負荷がかけられているとした。
欧州委員会はプレスリリースの中で、豚肉部門の社会経済的なレジリエンス(強靭性、回復力)の強化は、特に大豆や小麦などの植物性たんぱく質の輸入飼料の確保の点でこれまで以上に求められており、現在の困難な状況がピッグサイクルにより需給ギャップを調整できる範囲を超えているため、ワーキンググループによる検討が必要であるとしている。
同グループは、豚肉部門の利害関係者を集めた「畜産物に関する市民対話グループ(豚肉部門)」および全ての加盟国の専門家を集めた「共通農業市場委員会(畜産物部門)」の合同会議という形式で行われ、年末までに5回の会合が予定されている。3月10日にはその立ち上げ会合が開催された。また、4月6日に予定されている第1回目の会議では、社会経済的な力学をテーマに以下の議題について検討を行う予定となっている。
・EU域内の市場バランスは輸出をどの程度必要としているのか?
・輸出志向はリスクを高めるのか、それともリスクヘッジとなるのか?
・サプライチェーンの短絡化はEU域内の市場バランスにおいてどのような役割を担い、リスク軽減に役立っているのか?
・養豚の農村地域への付加価値とは何であり、軽減すべき脅威はあるのか?
・構造改革はどの程度、豚肉部門を救うことができるのか?
なお、今後は環境と気候に関する課題や動物の健康と福祉に関する考察が行われる予定とされており、2023年初めには全ての会合の報告をまとめた提言がなされることとなっている。