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国内初の生乳の市場取引を開始(豪州)

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 豪州連邦政府は3月3日、酪農家が生乳を小売業や輸出入業など既存乳業以外の取引先に直接販売することを可能とする「Australian Milk Price Initiative (AMPI)」が連邦政府の補助により立ち上げられたことを公表した。
 連邦政府からの56万豪ドル(4757万2000円:1豪ドル=84.95円(注1))の拠出をもとに創設されたAMPIは、エネルギーや商品、環境、金利、外国為替デリバティブなどの市場運営を行うメルカリ社(豪州法人)が所有し運営するプラットフォーム内に設置され、豪州酪農家連盟(ADF)と共同で運営される。当面は毎月2回、主要酪農生産地域であるビクトリア州内での配送が可能な生乳を対象に入札が行われる。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の
    為替相場」の2022年2月末TTS相場。

 豪州農業・水資源省のデビット・リトルプラウド大臣は同日付の声明の中で、AMPIは、より適切な規制や市場環境、より公正なサプライチェーンを備えたビジネス環境を作ることにより、酪農家を支援するものとしている。また、酪農家にとって以下のようなメリットをもたらすとしている。
・ 酪農家が直接、生乳を既存乳業以外の取引先にも販売できることにより、
 牛乳供給に対してより主体的な立場になることを可能にする
・ 酪農家により多くの生乳販売先の選択肢を提供できることで、
 長期的な生乳価格の維持が見込まれる
・ (酪農家が価格や契約条件などを見て生乳の販売先を決められるようになるため)
 生乳を販売する酪農家の優位性が高まり、業界の投資と成長を促進する

 また、ADFのグラディガウ代表も同日、「AMPIは豪州の酪農家がコストに見合った生乳販売を主体的に行うものである」とし、「(新市場での運用を通じ、)新たな考え方や技術を取り入れて新たな価値観を生み出し、社会に貢献する(イノベーション)もの」との声明を公表した。
現地報道によると、取引初日となった同日には、ビクトリア州の3つの地域で入札が行われ、取引価格は生乳の固形分(注2)1キログラム当たり9豪ドル(765円)を超えたものもあったとされ、豪州大手乳業の豪州フォンテラ社が2月17日に引き上げを発表した21/22年度(7月〜翌6月)の平均乳価の同7.30豪ドル(620円)を超えるものとなった。
(注2)乳脂肪分および乳たんぱく質。
【廣田 李花子 令和4年3月23日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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