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酪農・乳業の競争力強化に向けた5カ年計画を公表(中国)

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 中国農業農村部は2022年2月16日、今後の酪農・乳業振興政策の柱となる5カ年計画「乳業競争力向上行動計画」(注1)を発表した。これは、21〜25年の経済社会発展計画である「国民経済・社会発展第14次5カ年計画」に沿って、目標を具体化させたものである。
(注1)「<十四五>乳業競争力提昇行動方案」(2022年農牧発8号)を指す。
 本計画では、25年を目標年に数値目標を含めた行動目標(表)が示されている。生乳等生産量(注2)や大規模農家飼養頭数割合(注3)に関する目標値に注目すると、畜産業全体の5カ年計画である「全国畜産獣医産業発展計画」(注4)よりも高い目標が掲げられており、国内の酪農・乳業の発展に注力するという中国政府の決意がうかがわれる。
(注2)牛由来の生乳のほか、ヤギやヤクなど由来の乳を含む生産量。
(注3)全乳牛飼養頭数に占める、乳牛飼養頭数100頭以上の農家で飼養される乳牛の割合。
(注4)海外情報「畜産業および獣医産業の発展に関する5カ年計画を公表(中国)」を参照されたい。
表 計画で示された主な行動目標
 また、目標達成に向けた政策の方向性も示されており、酪農への取組としては、内モンゴル自治区など主要酪農生産地(注5)での取組を引き続き強化することを軸に、乳牛繁殖データプラットフォームの構築などにより優良品種の国内供給を推進することや、国産アルファルファの品質改善などによる良質な飼料の確保を図ることなどが示されている。
(注5)中国の主要酪農生産地については、「畜産の情報」22年3月「中国の酪農と乳製品市場〜新型コロナウイルス感染症の影響〜」54〜55ページを参照されたい。
 乳業への取組としては、需要の多様化に応じた乳製品の開発を支援することなどにより国産乳製品の競争力を向上させることや、近年増加している乳業の自社牧場保有を推進していくことなどが示されている。
 また、消費者への取組としては、観光牧場の推進や栄養知識の普及啓蒙活動などにより、酪農や乳製品に関する理解醸成を図るとともに、学生への飲用乳の普及を強化することが示されている。
 本計画では、乳業に対する政策の方向性として、チーズやチーズ副産物(ホエーなど)に関する技術研究の推進など、チーズに関する記述が散見されたことが印象的であった。また、中国では、IT関連など他分野の企業の投資対象として畜産・酪農が注目されているといわれているが、本計画では、企業がM&A(企業の合併・買収)や資本参加により酪農産業の競争力向上の一翼を担うことが奨励されていることから、この傾向が一層強まるとみられる。
 今後、本計画に基づき、地方行政部局が、地域ごとの具体的な計画を立案し、実行することとなる。
【阿南 小有里 令和4年3月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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