欧州委員会は3月31日、農産品の地理的表示(GI)制度の見直しを発表した。今回の見直しにより、EU全域でGI制度の導入を拡大し、農村地域の経済に恩恵をもたらすとともに、より高い基準の保護を実現するとした。なお、今回の見直しは、EU産農産品の高い品質基準を維持し、文化や料理など地域的な伝統を守り、EU域内外で本物のEU産農産品が認証されることを目的としている。
欧州委員会は、現行の制度見直しを行うために、(1)GIの登録手続きの簡略化、(2)オンラインプラットフォームのセキュリティなどの強化、(3)持続可能性のアピール性の向上、(4)生産者団体への権限付与、の4つの施策を提案した。このうち、登録手続きの簡略化に関しては、EU知的財産権庁(EUIPO)がGIの審査過程において技術的支援を提供する。欧州委員会は4年間に渡りEUIPOとGIに関して協力関係にあり、この間、EUIPOは約1300件のGI申請の審査に協力するとともに、GI登録に関連する全ての農産品保護名称の検索データベースを構築した。
欧州委員会のボイチェホフスキ農業担当委員は、「GI制度は、EUの食の伝統の豊かさと多様性を象徴しており、法的な枠組みの強化とさらなる調和を提案することにより、伝統的な高品質の農産品の生産を促進する」と述べた。さらに、「EUの農村地域の経済に恩恵をもたらし、伝統と自然資源の保護に貢献するとともに、EUの農産品の世界的な名声をさらに保護することになる」として見直しによる波及効果を強調した。
EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca)は同日付けでプレスリリースを公表した。Copa-Cogecaは、GI制度は農産品、食の伝統、生産者の労働の価値を高めることを可能にする有用かつ優れた制度であり、農村地域にとって重要な役割を果たし、その土地の文化や農業技術、動植物の品種を保護することにも役立つ制度であるとした。
一方で、EUIPOのGI制度へのさらなる関与については不安定要素であるとし、欧州委員会から農業部門やGIの特性について十分な知識を持ち合わせていないEUIPOに権限を移すことは、GI制度が危険にさらされると指摘した。また、GI制度の成功は、農産品の品質を地域と生産者の伝統的な技術に関連づけたことにあるとし、GI制度を良いものにするためには、このことを心に留めておく必要があるとした。