英国獣医師会(BVA)は3月30日、英国政府がEUからの輸入品に対する国境措置導入の再延期を検討していることについて懸念を表明した。現地報道によると、EUから輸入される動物由来製品などを対象とした各種検査の実施と衛生証明書の添付などを含む新たな国境措置の導入が7月1日から予定されている。しかし英国政府は、ウクライナ情勢などに伴うコストの上昇からサプライチェーンを守るため、国境措置導入の再延期を検討しているとされている。新たな国境措置は、英国のEU離脱(ブレグジット)後に導入される予定であったが、新型コロナウイルス感染症などの影響もあり、今までに3回の延期が行われている。また、現地報道によると、EU産生鮮食品を輸入している企業は新たな国境措置の再延期を歓迎しているとされている。
一方で、今回の報道を受けてBVAは、国境措置導入の再延期は英国のバイオセキュリティに大きな影響を及ぼし、家畜伝染病の侵入リスクを増加させる可能性があると警告した。また、国境措置導入が再延期されると4回目となり、欧州、アジア、アフリカなどで急速に広がり、養豚産業に壊滅的な影響を与えているアフリカ豚熱侵入の可能性を高めることになると述べた。
英国養豚協会(NPA)も同日、これまでの国境措置導入の延期がEUとの競争に不公平な状況を作っていると指摘するとともに、国境措置の再延期によりアフリカ豚熱発生リスクに晒される可能性があるとする声明を発表した。NPAは、アフリカ豚熱は欧州内で発生範囲が広がっており、長年、東欧での発生に限られていたものがドイツやイタリアにまで拡大していると指摘し、アフリカ豚熱ウイルスを保有している可能性のあるEU産製品にフリーパスを与えてはならないと述べた。
一方、英国家きん協議会(BPC)は同日、国境措置導入を再延期することは英国の輸出業者にのみ負担を強いることになるため、EU側に優位な状況が続くとする声明を発表した。BPCは、今回の国境措置導入を再延期する理由として、サプライチェーンの保護を挙げることには意味がないとしている。また、EUと互恵主義ではない状況下で英国の生産者にとって不利な立場が続くことは、最も重要な貿易相手先であるEUとの不公平な状況が常態化するというリスクがあると指摘した。さらに、公平で競争力のある貿易を行うためには、同じ土俵で競争することが極めて重要であるとし、英国からEUに輸出する品目の国境措置を外すか、EU産品に対する新たな国境措置を7月1日から導入する必要があるとした。