畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2022年 > 全米肉用牛生産者・牛肉協会、持続可能性キャンペーンの成果を発表(米国)

全米肉用牛生産者・牛肉協会、持続可能性キャンペーンの成果を発表(米国)

印刷ページ
 全米肉用牛生産者・牛肉協会(NCBA)はビーフ・チェック・オフ(注1)を財源に、牛肉生産に対する消費者の信頼を高めることを目的として、肉用牛生産者がいかに牛、土地、地域社会を大切にして牛肉生産に取り組んでいるかを発信する「牧場をもう一度考える(Rethink the Ranch)」キャンペーン(注2)を実施している。NCBAは4月8日、本キャンペーンの開始以来、動画コンテンツなどの視聴者数は延べ9694万人に至ったと発表した。

(注1)生産者などから徴収する賦課金(チェックオフ資金)を原資として牛肉の消費拡大対策を実施する仕組み。
(注2)ビーフ・チェック・オフを財源として、肉用牛生産者牛肉振興調査ボード(CBB)から委託を受けてNCBAが1992年から実施している「夕食と言えば牛肉(Beef. It’s What’s For Dinner)」キャンペーンの25周年を機に本キャンペーンを開始した。

 本キャンペーンは2017年10月から開始され、当初は4つの州(アイオワ州、ワシントン州、フロリダ州、カリフォルニア州)の6人の肉用牛生産者の物語を動画と画像を使用し配信してきた。肉用牛生産者と牛肉を合わせて発信することは当初、NCBAにとっても初の試みであり、肉用牛生産者の人間味、牛肉の生産工程、調理方法、栄養度の高さ、美味しさなどを発信するコンテンツとして注目を浴びてきた。

 そのような中、NCBAが21年春に実施したオンラインによる市場調査の結果、消費者の肉用牛・牛肉生産に対する理解や認識について、以下の点が明確になった。
@)消費者の約半数が肉用牛・牛肉生産が土地や環境に与える影響に関心を持ち、環境保護を支持するための行動を取っていること
A)消費者の半数以上が肉用牛・牛肉生産に肯定的と回答したものの、他業界と比較し、生産における持続可能性が低いと認識されていること
B)肉用牛がどのように飼養されているか理解していると回答した消費者がわずか4分の1程度にとどまり、業界の取り組みが理解されていないこと
C)消費者にとって重要な分野はアニマルウェルフェアであること
 
 この調査結果を踏まえ、NCBAは21年夏から「牧場をもう一度考える」キャンペーンの強化に取り組んだ。SNSやYouTubeによる肉用牛生産者の土地保全・環境保護に係る取り組みを紹介する動画シリーズの展開のほか、Spotify(音声配信サービス)、Sirius XM(デジタルラジオ)、ESPN(スポーツ専門ケーブルテレビチャンネル)、コネクテッドTV(スマートテレビ)による広告動画・音声の配信を行い、動画配信ではインフルエンサーと連携することで動画再生数の増加を図った(写真1、2)。
.
  「牧場をもう一度考える」キャンペーンのウェブサイトでは、消費者は全米50州の肉用牛生産者のインタビュー動画を視聴できる(写真3)。NCBAの担当者は「それぞれの消費者が自分の生活する州の肉用牛生産者の声を聞くことができると好評だ。50の州にはそれぞれのアニマルウェルフェアに即した持続可能な肉用牛・牛肉生産の物語がある。それを消費者に見てほしい」と述べた。
 そのほかにも、肉用牛生産者とシェフがコラボレーションした動画シリーズも制作されている(写真4、5)。シェフには生産現場での持続可能性に向けた取り組みを直接見てもらい、また、生産者にはレストランでの消費者の反応や意識を直接見てもらうなど、双方向の透明性に焦点を当てている。
.
.
 現在、NCBAはキャンペーン第二弾として、肉用牛・牛肉の安全・人道的・持続的な生産の認識を消費者にさらに広めるために、全米の肉牛生産者や繁殖農家に焦点を当てた「飼養と成長(Raised & Grown)」キャンペーンも実施中である。
 
【調査情報部 令和4年4月22日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部  (担当:調査情報部 国際調査グループ)
Tel:03-3583-9805