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生体牛の海上輸出禁止、特別委員会からの全面的支持得られず(NZ)

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 ニュージーランド(NZ)議会の第一次産業特別委員会(Primary Production Select Committee)(注1)は2022年4月14日、生体牛の海上輸出禁止に係る動物福祉法改正法案(注2)について、「本法案を成立させるべきかどうか、委員会としての統一見解は得られなかった」とする報告書を公表した。
 報告書には、生体牛輸出の関連団体や一般国民などの意見が多数紹介されている。その中には、輸出に使用する船舶の規格統一や輸出先でのアニマルウェルフェアを確認するための検証プロセスの確立など、海上輸出を禁止するのではなく、アニマルウェルフェアにより配慮した生体輸出となるよう規制などの改善を求める声がある。しかし一方では、移行期間の取消(海上輸出の即時禁止)や海上輸出を禁止する対象(注3)の拡大、空輸なども含めた生体輸出全般の禁止など、さらに厳しい措置を求める声もあり、国民の意見が二分されていることがうかがわれる。
 また、報告書には本法案に対する野党の反対意見も示されている。野党第一党の国民党は、海上輸出禁止による経済的損失が著しく過小評価(注4)されており、農村地域の雇用と収入に不利益を与えるため、本法案には全面的に反対するとしている。また、同第二党のACT党も同様に、家畜輸出の経済的重要性に言及した上で、このようなイデオロギー的な法案には反対であり、アニマルウェルフェアに配慮した基準の整備などにより、最高水準の家畜輸出を発展させるべきだとしている。
 今後、本報告を基に国会審議が進められるが、今国会は与党である労働党が多数を占めることから、現地報道では、本報告書の内容に関わらず、改正法案は可決される見込みとされている。
参考 NZの生体牛輸出頭数の推移
(注1)法案や国際条約などを詳細に調査・検討する12あるテーマ別特別委員会のうちの一つ。特別委員会は、複数の政党に所属する国会議員5〜12名程度で構成され、本委員会は、与党の労働党議員3名、野党の国民党議員3名およびACT党議員1名からなる。国民からの意見書や独自調査などを基に特別委員会が作成した報告書を参考に、国会での審議が行われる。

(注2)NZ政府は21年4月、2年間の移行期間を経た23年4月から生体牛の海上輸出を禁止することを公表し、その実現に向けた動物福祉法の改正手続きを進めている。海上輸出の禁止については、海外情報「2023年までに生体牛の海上輸送輸出を禁止(NZ)」を参照されたい。

(注3)現在審議されている動物福祉法改正案では、海上輸出を禁止する対象が牛、鹿、ヤギおよび羊とされている。

(注4)生体牛の海上輸出禁止を公表した際、ダミアン・オコナー農業・バイオセキュリティー・農村担当大臣は、「2015年以降のNZの第一次産業の輸出額に占める海上輸送での生体家畜の輸出額は約0.2%に過ぎない」と言及している。
【阿南 小有里 令和4年4月25日発】
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