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キャッサバの持続的開発の現状と方向性に関する会議を開催(ベトナム)

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最終更新日:2022年5月23日

 ベトナム農業農村開発省(MARD)は 4月13日、ザライ省人民委員会とベトナムにおけるキャッサバの持続的開発の現状と方向性に関する会議を開催し、2021年の同国のキャッサバ作付面積は52万8000ヘクタール、生産量は1070万トンであることを同省のホームページにて公表した(写真1)。なお、同国のキャッサバ作付面積は、近年、おおむね50万ヘクタール程度で推移しており、国連食糧農業機関(FAO)によると、2020年の同国におけるキャッサバの生産量は約1049万トンであることから、前年比で2.0%程度の増産と推定される。
写真1 ベトナム農業開発省HP
写真1 ベトナム農業開発省HP
 また、同国のキャッサバとキャッサバ製品の輸出量の90%以上が中国向けであるが、22年1〜2月に中国へ輸出されたキャッサバとキャッサバ製品は49万4380トン(前年同期比24%減)、輸出高は2億577万ドル(267億2129万円:1米ドル=129.86円(注1)、同13.8%減)と前年同期から減少したことも報告された。ベトナムの調査会社Agromonitorによると、同国のタピオカでん粉の輸出量は31万3237トン(前年同期比25%減)と大幅に減少したとしており、中国への輸出量の減少が全体の輸出量減少の要因であると考えられる。このため、輸出に関して中国への輸出を維持しながらも、他市場の開拓を進めなければならないという認識が共有された。

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の 為替相場」の2022年4月末TTS相場。

 ベトナムキャッサバ協会の副会長は、中国以外の輸出先として、台湾、韓国、東南アジアおよび日本を挙げた。加えて同協会ではMARDとともに、EUへの輸出に向けた品質向上について検討していることにも言及し、市場の多様化には、豊富な種類のでん粉を原料とした高付加価値製品の開発が欠かせないとして、でん粉加工技術を向上させることが必要であると述べた。
なお、近年ベトナムからEUへのタピオカでん粉の輸入量に大きな変動はないものの、他の地域からEUへのタピオカでん粉輸入量としては増加傾向にあり(図)、20年にはEU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)が発効されるなど、潜在的に有望な市場として注目されている。
 
図 EUのタピオカでん粉輸入量
 また、同国では17年以降、キャッサバモザイク病(注2)が継続的に発生しており、その動向が注目されているが、MARDのレ・クオック・ドアン副大臣は、同国のキャッサバ生産を持続的に発展させるため科学的な研究にも注力し、無病・耐病性の新品種を見つけるための国際協力を推進することを表明しており、今後のキャッサバ生産の動向が注目される。
 
(注2)ウイルスの感染によって葉に黄化斑ができる病気で、光合成が十分に行われず、最悪の場合には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。ベトナムのほかに、近隣国のタイやカンボジアの一部で流行が確認されている。
写真2 キャッサバモザイク病に感染したほ場(中部の都市フエ省)
写真2 キャッサバモザイク病に感染したほ場(中部の都市フエ省)
【針ヶ谷 敦子  令和4年5月23日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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