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欧州委員会、穀物、油糧種子などの市場観測機能を強化(EU)

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 欧州委員会は5月20日、穀物などの価格が高騰し、供給が不確かな状況下で、EU域内の穀物(トウモロコシ、小麦、大麦など)、油糧種子(ヒマワリ、菜種、大豆など)、米の在庫に関する月次ベースのデータを収集し公表することを決定した。今回の決定は、ロシアによるウクライナ侵攻に関連し、3月23日に発表された「食料供給の安定・食料システム強靭化」の実現に向けた政策文書に続く措置(注)である。

(注)海外情報「欧州委員会、食料供給の安定などの実現に向けた政策文書を発表(EU)」を参照されたい。

 欧州委員会は、穀物、油糧種子、米の在庫に関する最新の情報をサプライチェーン(供給網)の各関係者が得ることは、市場の混乱を避けるための関連措置を各関係者が決定する上で必要としている。加盟国は、生産者、卸売業者などの前月の在庫量を翌月末までに欧州委員会に報告することとなるが、加盟国政府が在庫量を把握するための準備期間を設けて、6月分の在庫のデータから収集を開始する予定である。また、欧州委員会は、ロシアのウクライナ侵攻により影響を受けた農産物の市場観測機能の強化の一環として、EUおよび世界のトウモロコシ、小麦、大麦、菜種、ひまわり油、大豆に係る価格、生産、貿易について概観できる簡易統計サイトを立ち上げた。
 ウクライナは小麦、大麦、トウモロコシ以外にも、特にヒマワリ油については世界の重要な供給国であるとしつつも、EUは多くの農産物をほぼ自給しているため、域内の市民への食料供給の心配はないとした。一方で、ロシアのウクライナ侵攻の直接的な影響として、サプライチェーン全体のコストの上昇、貿易の混乱、世界の食料安全保障を挙げており、食料の輸出制限や輸出禁止を回避することが重要であると主張している。
 
 欧州配合飼料生産者連盟(FEFAC)は5月20日に発表した2022年の配合飼料市場の見通しの中で、ウクライナとロシアからのトウモロコシ、ヒマワリ油かすなどの飼料原料の供給不足は、主に米国とカナダからの輸入によって部分的に補完されたとした。しかし、ウクライナに残されている穀物在庫をどのようにウクライナから国際市場に輸出させるかについて課題が残っているため、飼料原料の供給については引き続き注視する必要があるとしている。
【小林 智也 令和4年6月6日発】
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