中国国家発展改革委員会(以下「発改委」という)など関係機関は2022年5月、4月に続き「政府の豚肉備蓄調整メカニズムを改善し、豚肉市場の供給と価格の安定を図る準備計画(以下「準備計画」という)」(注1)に基づく国家備蓄による豚肉の買入れを相次いで実施した。
発改委によると、養豚生産者の経営状況の指標の一つである豚/穀物比(注2)は22年の3月下旬に底を打った後、少しずつではあるが継続して回復傾向にあるとされている。4月下旬に第1級警報水準となる4:1台を脱し、5月下旬には第2級および第3級警報水準である5:1台で推移している(5月25日公表では豚/穀物比は5.54:1、図)。豚/穀物比の回復は生体豚価格の上昇によるもので、一般的な生産者の損失は縮小に向かっており、一部の養豚企業では損益分岐点の水準まで回復したところもあるとされている。
4月以降の国家備蓄による買入れの実施状況は、4月に計5回(買入れ対象数量:計16万トン)、5月に計4回(同12万トン)実施されており、第1級警報水準は脱したものの、これまでと同様もしくはそれ以上の頻度で買入れを実施している(表)。
しかしながら、現地報道によると、これまで実施された買入れのうち4月以降は落札実績が大きく低下している。関係者の間では、買入れに際し、産地証明書や品質保証期間が求められるほか、包装や輸送方法などの条件が厳しく規定されていることなどから、応札が容易ではないとの声がある中で、今後の豚肉価格の好転に対する期待が大きくなっていることが要因の一つであるとされている。
(注1)「完善政府猪肉儲備調節机制 做好猪肉市場保供穏价工作預案」
(2021年第770号公告)を指す。なお、詳細は海外情報「
豚肉価格下落を受けて国家備蓄のための豚肉の買入・保管を開始(中国)」を参照されたい。
(注2)政府による養豚生産者の収益性の指標値。算出方法は、1キログラム当たり生体豚出荷価格/1キログラム当たりトウモロコシ卸売価格。損益分岐点は7:1とされている。
- 第1級警報基準比 : 5:1未満
- 第2級警報基準比 : 第3級の状態が三週間以上継続
- 第3級警報基準比 : 5:1以上6:1未満
- 基準比(損益分岐点): 7:1