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2022/23年度の当初乳価は記録的な高値(豪州)

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 豪州の乳業各社は、酪農業界における行動規範(Dairy code of conduct)(注1)に基づき、6月1日までに2022/23年度(7月〜翌6月、以下「新年度」という)の当初乳価を発表した。豪州全体の生乳生産量がふるわない中で(注2)、一定量の生乳を確保したい各社の思惑などから、いずれも記録的な高値となっている。
(注1)酪農業界における行動規範に基づき、乳業各社などは毎年6月1日までに、次年度の生産者支払乳価など取引条件を公表することが義務付けられている。
(注2)詳細は、「畜産の情報」22年6月号「生乳生産量、9カ月連続で前年同月比減」を参照されたい。
 
 22年6月1日時点での各社の新年度当初乳価を見ると、豪州最大手のサプート・デイリー・オーストラリア社(以下「豪州サプート社」という)は、主要酪農生産州であるビクトリア(VIC)州などの当初乳価を生乳の固形分(注3)1キログラム当たり8.50豪ドル(799円:1豪ドル=93.95円(注4))と提示した(図)。
 また、ニュージーランド最大手フォンテラ社の豪州法人である豪州フォンテラ社は同8.25豪ドル(775円)と提示した。同社は、中国での新型コロナウイルス感染症(COVID−19)によるロックダウンやロシアによるウクライナ侵攻などにより乳製品国際価格が下落するなどの一時的な影響を受けたものの、これらの短期的な影響が解消されるにつれ世界的な乳製品需要は回復すると見込んでいる。しかしながら、COVID−19や世界的なインフレ圧などが需要に与える影響については注視が必要だとしている。
 さらに、豪州の乳価情報などを一元的に提供するミルクバリューポータル(milk value portal)(注5)によると、大手3社の中で一番初めに新年度乳価を公表したベガ社は、VIC州とニューサウスウェールズ州南部を中心とするリベリナ地方の酪農家に対し同8.85豪ドル(831円)と提示したとされる。これについてベガ社は、国内外における多様な自社ブランドの強みを反映した結果としている。
  また、乳業以外でも豪州小売大手のコールスは、自社のプライベートブランド牛乳などへの生乳供給を目的に酪農家との直接契約を拡大しており、VIC州の酪農家に対し、同9.05豪ドル(850円)と高い乳価を提示しているとされる。
(注3)乳脂肪分および乳たんぱく質。
(注4)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年5月末TTS相場。
(注5)乳製品の加工業者、販売業者などを代表する豪州の政府機関である豪州乳製品連合会(Australian Dairy Products Federation)が運営するポータルサイト。乳価の透明性を高めることを目的に、地域や成分などに応じた平均的な乳価を試算できるツールや乳業関係の最新情報などが掲載されている。
 21/22年度には、6月1日の当初乳価公表期限から7月1日の新年度開始日までの間に、酪農家との契約を目指して乳業各社の乳価引き上げ合戦が行われた(注6)ことから、今後の動向に注目が集まっている。
(注6)詳細は、海外情報「2021/22年度の当初乳価は7ドル前後で幕開け(豪州)」を参照されたい。
図 各社の当初乳価(6月1日時点)

補足

 通常、乳価は、乳質や出荷量などに応じて、出荷月ごとの単価が設定されているが、ここでは全体像を示すため、各社発表や現地報道をもとに、22/23年度当初の生乳の固形分1キログラム当たりの平均的な単価水準を示した。

参考

1.農業界における行動規範(Dairy code of conduct)

2.ミルクバリューポータル(milk value portal)

公式サイト(https://milkvalue.com.au/
【阿南 小有里 令和4年6月9日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530