ウクライナ農業政策・食料省は5月27日、2022年5月26日時点のウクライナの支配地域での春作物(穀物および油糧種子)の作付面積を発表した。これによると、同面積は昨年度から275万7800ヘクタール減少したものの、1415万9000ヘクタールに達したとしている。
その一方、同省は、昨年度の穀物生産は順調であったとしている。米国農務省(USDA)が22年1月末に公表した報告書(GAIN)によれば、昨年度のウクライナの小麦生産量(21年7月〜22年6月までの消費に仕向けられるもの)は前年度比30%増の3300万トン、大麦(同)は同27%増の1020万トン、トウモロコシ(21年10月〜22年9月までの消費に仕向けられるもの)は同39%増の4200万トンと見込まれている。ロシアによる侵攻以降、穀物貯蔵庫の破壊などが報じられているが、輸出が順調に行えない状況を考えると、相当量の穀物が国内に滞留している可能性がある。
ウクライナ政府も穀物の輸出ルート開拓に注力しており、同省のプレスリリースによれば、リトアニア(クライペダ港)、ラトビア(リガ港、ベンツピルス港、リエパーヤ港)、ポーランド(グランスク港)などの施設の利用に向け度重なる視察が行われている。
また、ウクライナの牛肉や豚肉は、動物衛生上の規制によって引き続きEU加盟国向けへの輸出はできないが、ルーマニアのイサクチャを経由しフェリーで輸送されるルートであれば、輸入先(仕向先)が要求する証明書の添付や、ウクライナから輸入先(仕向先)へ密閉容器で輸送されるなどの一定の条件を満たせば、EU加盟国経由で第三国へ輸出することが可能になったと発表されている。
加えて欧州側からも連帯レーン(注)の確立などによるウクライナ産農畜産物輸出への支援が進められている。
(注)連帯レーンについては、
海外情報「欧州委員会、ウクライナ産農産物の輸出支援策を発表(EU)」を参照されたい。
一方でウクライナ政府は、多くの農畜産物について、政府による輸出管理を実施している。例えばライ麦、オーツ麦、そばの輸出は禁じられているが、小麦、大麦、トウモロコシ、大豆、ひまわり、大豆油、ひまわり油、油かす、生体牛、冷凍牛肉、鶏肉、鶏卵、砂糖の輸出は、政府による一定の関与により認められている模様である。