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広西チワン族自治区でサトウキビ生産者向けの新保険制度を開始(中国)

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最終更新日:2022年6月23日

 中国財政部、農業農村部および中国銀行業監督管理委員会(CBRC)は5月7日、広西(こうせい)チワン族自治区に対し、「完全コスト保険(原文:完全成本保険)」と「作付収入保険(原文:〇〈のぎへんに中〉植收入保険)」の実施に係る通知を発出した。

 完全コスト保険とは、砂糖生産量第1位を誇る同区のサトウキビ生産者を対象に(図)、主要な自然災害のほか、虫害や()害および想定外の事故などを対象に農業生産活動に係る経費を補償するもので、もう一方の作付収入保険とは、サトウキビの価格と生産量の変動による収入の損失を補償するものである。両保険の導入に際し、同地区の砂糖産業のリスク耐性の強化と国内の砂糖供給体制の安定が目標として掲げられている。
 
 財政部によると、両保険はもともと、米、小麦およびトウモロコシ生産者向けに2018年から内モンゴル自治区などで試験的に導入されたもので、2021年には13省(河北(かほく)省、内モンゴル自治区、(りょう)(ねい)省、(きつ)(りん)省、黒龍(こくりゅう)(こう)省、江蘇(こうそ)省、安徽(あんき)省、江西(こうせい)省、山東(さんとう)省、河南(かなん)省、湖北(こほく)省、湖南(こなん)省、()(せん)省)まで拡大された。今回、広西チワン族自治区で両保険が導入されることとなった背景として、13省での実績が好評で、制度の運営基盤が一定程度築かれていたことがある。また、同地区のサトウキビ生産者からは補償水準の引き上げを求める声が上がっており、「サトウキビ生産者向けの既存の保険と比べて自費負担額が増えたとしても、両保険に加入したいか」という財務部の質問に対し、9割以上の大規模生産者が加入の意向を示したという。
 
 財務部は両保険を導入することで、損失対象や補償額が拡大されると説明している。具体的には、サトウキビ生産者の負担率を既存の保険と変えないことを前提に、同地区の平均的なサトウキビ栽培による収入で試算を行うと、最高補償水準は1ムー(注1)当たり約2400元(4万6752円(注2)、1ヘクタール当たり約70万円)で、既存の保険の3倍に達するという(注3)。また、補償が比較的低額な既存保険に対し、完全コスト保険では、自然災害や深刻な虫害、想定外の事故といったリスクに対する補償が可能であり、また作付収入保険では、価格と生産量という二要素の変動が対象であるため、補償が比較的容易に実行されやすく、補償額も大幅に増額することになる、と説明されている。
 
 なお、保険の重複利用はできないものの、既存の保険は引き続き残すことで、今年度からは自由に補償制度を選択でき、保険ニーズの多様化に対応することとしている。例えば、大規模生産者の場合は完全コスト保険や作付収入保険に加入してより高いリスク補償を受けることができ、小規模生産者の場合は保険料の節約や既存の保険への加入意志を尊重することができると財務部の担当者は述べている。


(注1)1ムー=0.0667ヘクタール。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の5月末TTS相場1中国人民元=19.48円を使用。
(注3)両保険の補償水準は、原則としてサトウキビ栽培による収入の80%以下とされている。
図1
【塩原 百合子 令和4年6月29日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532