米議会、海上輸送法改正案を可決(米国)
米国議会下院は6月13日、2022年海上輸送法の改正案を可決した。これにより、本法案は両院で可決し、バイデン大統領による署名を経て成立することになる。
(1)2022年海上輸送法改正
2022年の海上輸送法の改正案は、海上輸送業者に対する連邦海事委員会(FMC)の権限を強化することで滞留貨物問題などの解決を図るものである。具体的には、海上輸送業者、海上ターミナルオペレーター、仲介業者が荷主や運送業者に対し、空きコンテナなどの貨物スペースがあるにも関わらず、その利用の意向を不当に拒否すること、苦情の申し立てや他の業者の利用などを理由にした不公正な差別的行為を禁止するものである。また、海上輸送業者による超過保管料や空コンテナの返却延滞料などあらゆる料金に関する苦情を調査する権限をFMCに付与し、不当な料金の請求があった場合には、海上輸送業者などに対し返金や罰金を命じることができるとしている。
バイデン大統領は本法案の可決を受け、「パンデミックの中、海上輸送業者は輸送費を1000%も引き上げ、また、米国からの荷役を拒否して空きコンテナのままアジアに運送するなど、米国経済に多大な損失を与えてきた。本法案は米国小売業者、農家、消費者のコスト引き下げに寄与するものであり、米議会による可決を称賛する」と述べた。
(2)米国畜産業界の反応
@)国際乳食品協会(IDFA)のダイクス会長による声明
超党派の両院議員の協力により、米国乳製品をはじめとした食品輸出の課題となっているサプライチェーンのボトルネックに対応するための海上輸送法の改正案が可決されたことに感謝したい。これにより、間もなく世界中の消費者に向けて、より多くの空コンテナに高品質で持続可能な米国産乳製品を詰め込み、迅速に輸出することができるようになる。
A)米国食肉輸出連合会(USMEF)のホルストロム会長による声明
USMEFは、超党派の両院議員が本法案を強力に支持したことに感謝し、バイデン大統領による署名を待ち望んでいる。投入コストが上昇する中で、農畜産物の価値を最大化することが極めて重要であり、そのためには国際市場へのアクセスを確保することが必要である。本法案は、米国輸出業者の海上輸送を改善する重要な一歩である。
B)北米食肉協会(NAMI)のポッツ会長による声明
外国籍海上輸送業者の理不尽な対応は米国産商品の輸出遅延の要因の一つである。特に、生鮮食品である食肉業界では、輸出遅延により大きな負担が生じている。外国籍海上輸送業者による輸出貨物の予約の拒否あるいはキャンセルは頻繁に生じており、遅延は数週間から数カ月に及ぶこともある。本法案は米国食肉業界に影響を与える国際的なサプライチェーンの課題に対処できるだろう。
【調査情報部 令和4年6月28日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 国際調査グループ (担当:調査情報部 国際調査グループ)
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