中国農業展望報告(2022−2031)を発表(豚肉編)(中国)
中国農業農村部は2022年4月21日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2022−2031)」を発表した。同大会は14年から毎年開催されており、今回は21年の総括と31年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。本稿では、この中の豚肉について紹介する。
1.2021年の動向
2021年の生産量は、中国の養豚業がアフリカ豚熱の影響から立ち直り、総飼養頭数およびと畜頭数が大幅に回復したため、前年比28.8%増の5296万トンと大幅に増加した。そのような中で総飼養頭数は増加を続け、年末には同10.5%増の4億4900万頭を記録した。なお、19年第4四半期以降、各地で優れた施設を整備した大規模養豚場が多数建設され、規模化が進んだことで、供給面の安定化が図られた。
輸入量は、生産量の回復により、同15.5%減の370万8700トンと前年をかなり大きく下回った。第1四半期は豚肉価格の高止まりを見込んだ輸入業者により積極的に輸入が実施され、特に3月は月別の輸入量で最大となったものの、豚肉価格の低下が明確になってきた4月以降は前年を下回る状況となった。主な輸入先国はスペイン、ブラジル、米国、デンマークなどである。
消費量は、生産量の大幅な増加を背景に同24.5%増の5659万トンと大幅に増加した。
価格面では生体豚平均価格は同38.9%安の1キログラム当たり20.74元(404円:1元=19.48円(注))、豚肉の平均価格は同35.8%安の同33.65元(656円)と、ともに前年を下回った。春節による季節的な需要増から上期の豚肉価格は高値で推移したものの、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の影響もある中で、夏期の需要低下に伴い、豚肉平均価格は下落を続け、同年10月にはアフリカ豚熱まん延以前の18年7月以来の低価格となった。価格の低迷を受け、春節に向けた塩漬け、燻製などの加工肉製造が例年よりも前倒しされたため、豚肉需要の回復が促され、第4四半期は価格の回復が見られた。
2.2022年の動向予測
2022年の生産量は、引き続き順調な生産が行われ、同2.9%増の5450万トン、と畜頭数は、同3.4%増の6億9400万頭と予測されている。21年の7月から繁殖雌豚頭数の減少が見られたため、約10カ月後以降の豚肉供給に影響が出始めるとみられ、22年後半は供給過剰の状況から安定的な需給状況に落ち着くと見込まれている。
輸入量は、国内豚肉価格の低迷および国際価格の高騰、低関税率の調整(戻し)により、同32.3%減の251万トンと見込まれている。
消費量は、同0.6%増の5691万トンとわずかな増加が見込まれている。上半期はCOVID−19の影響により豚肉需要の低下が見られるものの、下半期は徐々に回復に向かうと見込まれる。
また価格面では、生体豚平均価格は同11〜18元(214〜351円)の間で推移し、年平均では同15元(292円)程度となると見込まれる。豚肉の平均価格は、上半期では豚肉の供給過多が継続することから前年に比べて大きく下落して推移するが、下半期は需給状況が安定に向かうことから緩やかに平年価格に戻ると予測される。
3.2031年までの動向予測
生産量は、安定需要と人口の微増に支えられて微増傾向が続くとされ、2026年には5535万トン、31年には5591万トン(基準期間比<19〜21年の平均値との増減率>22.7%増)に達すると予測される。
消費量は、今後10年のうち前半は増加傾向が続くとみられ、26年には5742万トンに達するとされるが、後半は牛肉、鶏肉、羊肉の生産量および消費量の増加により豚肉の消費量は減少し、31年には5699万トンとなると予測される。
輸入量は、前述のとおり、供給過剰による豚肉価格の低迷、国際価格の高騰、低関税率の調整により輸入品に対する需要が減少し、26年には217万トン、31年には120万トンと減少傾向が予測される。
また、価格面では豚肉生産、消費がともに安定に向かうことにより長期的には価格の変動幅は小さくなると予測される。なお、豚肉の価格変動のサイクルもこれまで4年程度で変動していたものが、5〜6年程度に伸びることでより穏やかな価格変動へと移り変わっていくものとされている。
今後の見通しについて、世界的な家畜伝染病および感染症の影響、貿易関連政策、経済発展や人口構造、環境の変化や資源の制限などの外的要因が養豚業に影響を与える可能性があるとしている。畜産物の国際的な取引の活性化に伴い、海外からの疾病持ち込みリスクが大きい状況にある中で、疾病対策に伴う経済的負担が大きく、生産者により疾病対策に対する意識や実施状況に差があることも懸念されている。さらに飼料穀物の輸入増に伴い、国際相場の影響を受け、生産コストの増加により養豚業の発展に影響を与える可能性も懸念されるとしている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年5月末TTS相場。
【海老沼 一出 令和4年7月1日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4389