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中国農業展望報告(2022−2031)を発表(トウモロコシ編)(中国)

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最終更新日:2022年7月6日

 中国農業農村部は2022年4月20日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2022−2031)」を発表した。同大会は14年から毎年開催されており、今回は21年の総括と31年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。本稿ではこの中のトウモロコシについて紹介する。

1.2021年の動向

 2021年の作付面積は、前年来のトウモロコシ価格の高値を受けて農家が作付けに意欲的であることを反映し、4332万ヘクタールと16年以来5年ぶりに増加に転じた。中国農業農村部の調査によると、同年は一部地域で病害などが確認されたものの、気象条件は年間を通じてトウモロコシの生育に概ね良好となったことで、生産への影響は限定的だったとしている。 
 同年の単収は1ヘクタール当たり6.3トン(前年比0.4%減)と前年からわずかに減少したものの、作付面積の増加から生産量は2億7255万トン(同4.6%増)とやや増加した。
 輸入量は、国内供給量のひっ迫傾向を背景にトウモロコシ価格が高騰する中で、米中経済貿易協定第1段階合意に基づく米国からの輸入量の増加により、2835万トン(同2.5倍)と前年から大幅に増加した。主要な輸入先は米国とウクライナであり、両国からの輸入が輸入総額の99%以上を占めた。輸入総額の70%を占めた米国からの輸入は1983万トン(同4.6倍)、ウクライナからの輸入も824万トン(同30.8%増)とそれぞれ大幅に増加している。
 消費量は、2億8205万トン(同2.1%減)と前年からわずかに減少した。用途別に見ると、飼料向けは、トウモロコシ価格が小麦などと比べて高く、飼料会社が生産コスト削減のためにトウモロコシの配合比率を減らしている影響から、1億8000万トン(同3.2%減)とやや減少した。工業向けは、トウモロコシ価格の高騰に伴う収益低下などにより8000万トン(同0.6%減)とわずかに減少した。種子向けは、トウモロコシ作付面積の拡大に伴い、198万トン(同5.0%増)とやや増加した。食品向けは、食用品種と消費の多様化に伴い960万トン(同0.5%増)とわずかに増加した。

2.2031年までの動向予測

 今後10年間は、トウモロコシの生産量に比べて消費量が伸びないと見込まれ、輸入量は減少しながら安定すると考えられる。また、トウモロコシの貯蔵技術が向上しており、貯蔵ロスの減少傾向は続くと見込まれている。
作付面積は、2022年に4252万ヘクタール(同1.8%減)とわずかな減少が見込まれるものの、31年には4340万ヘクタール(基準期間比〈19〜21年の平均値からの増減率〉3.4%増)と21年並みで安定すると予測されている。
 単収は、22年には1ヘクタール当たり6.4トン(前年比1.6%増)とわずかな増加が見込まれ、さらに31年には1ヘクタール当たり7.5トン(基準期間比18.9%増)と大幅な増加が見込まれている。
生産量は、単収の向上を受け、22年には2億7256万トン(前年同)と前年並みであるものの、31年には3億2393万トン(基準期間比22.4%増)と大幅に増加すると予測されている。
輸入量は、新型コロナウイルス感染症やロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けて22年には2000万トン(前年比29.5%減)と大幅な減少が見込まれており、その後も減少が続き、31年には757万トン(基準期間比48.9%減)と予測されている。
 消費量は、22年には2億8870万トン(前年比2.4%増)、31年には3億2821万トン(基準期間比16.3%増)と生産量と比較して長期的な増加率が小さくなると見込まれている。用途別に見ると、飼料向けについては、中長期的には人口増加が続き、1人当たりの肉・卵・牛乳の消費量増加に伴う飼料需要増加により、31年には2億1389万トン(同18.7%増)に達すると予測されている。工業向けは、でんぷん糖(注)などの需要が引き続き拡大することから9129万トン(同14.4%増)、食品向けは食の多様化を背景に1201万トン(同25.9%増)、種子向けは安定した作付面積に支えられ200万トン(同4.2%増)と、31年までにそれぞれ増加することが予測されている。
 
(注)中国ではさまざまな種類のでん粉糖があり、固形では結晶ぶどう糖、マルトデキストリン、オリゴ糖などがあり、液状では水あめ、異性化糖、高加糖液糖などがある。
トウモロコシの需給動向および見通し
【針ヶ谷 敦子 令和4年7月6日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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