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EUとニュージーランド、FTAで大筋合意 (その1:EU側の措置と反応)(EU)

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 欧州委員会は6月30日、ニュージーランド(NZ)と自由貿易協定(FTA)について大筋合意したことを発表した。これにより、EUの農産物については、本協定の発効後1年目からNZの輸入関税が全て撤廃されるとともに、農産物の名称を保護する地理的表示(GI)制度も適用され、163食品のGIが保護されることとなった。一方で、NZからの農産物の輸入については、牛肉は、既存の関税割当数量枠内の関税が引き下げられるとともに、新たに別の関税割当数量枠(枠内税率7.5%)が設定され、協定発効から8年目には1万トンまで拡大することとされた。また、乳製品についても牛肉と同様に、8年目にバター1万5000トン、チーズ2万5000トン、粉乳1万5000トンの関税割当数量枠が新たに設置されるなど(表)、慎重に市場が開放されることになった。
表 畜産物貿易に関するEU側輸入措置に関する内容
 この大筋合意の内容は、2021年10月20日に発表された英国とNZとのFTAと対照的なものであり、英国との協定では移行期間後に牛肉や乳製品などの関税が撤廃されることに対して、EUとの協定では、既存の関税割当数量枠および新たに設置された関税割当数量枠外の関税については維持されることとされている。
(参考)海外情報「英国とニュージーランド、FTAで大筋合意(その1:英国側の措置と反応)」を参照されたい。
 
 欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は6月30日のプレスリリースの中で、「NZは、インド太平洋地域における欧州の重要なパートナーである。この貿易協定は、双方の企業、農家、消費者に大きな機会をもたらし、両国の貿易を30%増加させることができる」と述べている。また、同委員会のドムブロフスキス副委員長(兼通商担当委員)は、「これは新世代の貿易協定であり、両国が経済的、環境的に利益を得ることができる。新型コロナウイルス感染症およびロシアのウクライナに対する侵攻といった2つの危機から立ち直ろうとする中で、この協定のような新たな経済的機会は不可欠である」と述べている。
 
 一方で、同日付けでEUの各種農業団体もコメントを発表している。EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa Cogeca)は、EUの生産安全基準(ホルモンフリー牛肉など)とGIが認められたことを歓迎しつつも、この協定により欧州の農畜産物の貿易収支の赤字(2021年で約7億5000万ユーロ<1081億円:1ユーロ=144.17円(注)>)がさらに拡大し、酪農、羊肉、牛肉など欧州の生産者にとっての重要品目で痛みの伴う妥結がなされたとしている。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の22年6月末TTS相場。
 
 欧州乳製品輸出入・販売業者連合(eucolait)は、EUと強い歴史的なつながりと共通の価値観を持つNZとの協定妥結を歓迎する一方、両者とも自給率100%を超えた市場であることから、この協定により乳製品貿易の拡大は限定的であるとしている。このため、この協定の主な価値は市場統合を強化し、世界的に乳製品部門に影響を及ぼす課題に共同で取り組むための新たな枠組みを提供することとの見方を示した。
 
 欧州乳業協会(EDA)は、EUの通商政策が高度に戦略的な重要性を持って行われていることを承知しつつも、貿易協定は公正な貿易と公平な競争の精神に基づき行われ、常に両者に利益をもたらす状況となるよう調整されなければならないとした。しかしながら、この貿易協定ではNZの乳製品に一方的な優位性を与え、EUは限界まで譲歩していると不満を表明し、欧州委員会には、関税割当がNZにこれ以上有利にならないように管理されることを期待するとした。
【調査情報部 令和4年7月11日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527