米国際貿易委員会、尿素硝酸アンモニウム(UAN)液体肥料への課税を否決(米国)
最終更新日:2022年7月28日
米国農務省(USDA)は9月27日、ロシア-ウクライナ紛争による肥料関係鉱物の供給不足、エネルギーコストの高騰、世界的な需要増加、米国肥料業界の競争力不足などを要因とした肥料コスト高騰への対策として5億米ドル(729億500万円:1米ドル=145.81円(注))を措置し、米国産肥料の増産に向けた支援を開始することを発表した。また、1件当たりの補助金上限額を1億米ドル(145億8100万円)、最低額を100万米ドル(1億4581万円)に設定した。まずは9月30日からの45日間で、2023年、24年に生産者が使用する肥料の増産につながる申請を受け付け、その後さらに45日間で、競争力強化による価格高騰抑制と米国産肥料の大幅増産につながる申請を受け付けることとしている。
なお、本支援については、22年3月に「独立した」「革新的な」「持続可能な」肥料生産への支援として2億5000万米ドル(364億5250万円)の予算措置、5月には2億5000万米ドル(364億5250万円)の追加措置が既に発表されており、支援内容などを検討すべく3月から7月までパブリックコメントが実施されていた。
(注)三菱USJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2022年9月末TTS相場。
1 USITCによる調査の経緯
本支援は国内肥料業界の競争力の強化、肥料の輸入依存の軽減、温室効果ガスの排出量削減などを目的として、「独立系企業・施設」「米国産肥料」「革新的な肥料生産」「持続可能な肥料生産」を支援することとしている(図1)。
2 米国農業団体の反応
また、具体的には以下の費用や取り組みを支援することとしている。
(1)肥料製造施設の新設費用
(2)専門家への報酬を含む肥料開発費用
(3)肥料製造施設の運転資金
(4)既存肥料製造施設の機能向上・拡張・補改修に係る費用
(5)機能向上・安全性向上に要する機器・機材の設置に係る費用
(6)温室効果ガスの排出削減、肥料使用効率の向上、大気・水質の改善など気候変動に対応した機器の設置に係る費用
(7)法律に基づく包装・表示要件および労働安全への確実な対応
(8)生産能力向上や生産量増加に要する労働力の確保と教育・研修機会の確保
米国では、昨夏以降からの肥料コストの高騰が生産者の経営を圧迫している。米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)が公表しているアイオワ州の肥料コストの推移を見ると、無水アンモニア肥料は2022年8月には1トン当たり1640米ドル(23万9218円、前年同月比122.8%高)と記録的な高値を記録した。その後、下落して同年9月には同1240米ドル(18万804円)まで低下した(図2)。尿素肥料、リン酸マグネシウムアンモニウム肥料、カリウム肥料も前年と比較するといずれも高水準で推移している。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9805