このような状況の中で、ウクライナをはじめ欧州各国は現在、ウクライナからの穀物輸出を可能とする代替経路を模索している。黒海での船舶による輸出経路が使えないことから、ウクライナからの欧州各国への穀物輸送の物理的な障壁としては、ウクライナと他の欧州各国との間で鉄道のレール幅が異なること(これにより国境で積み替えが必要となり時間や労力がかかる)、また、国境での検疫が必要なことなどが挙げられる。
これらに対応するため、欧州委員会は5月12日に支援策を発表した
(注)。
(注)海外情報「欧州委員会、ウクライナ産農産物の輸出支援策を発表(EU)」を参照されたい。
さらに7月6日には、EUとウクライナは道路運輸に関する二国間協定を締結し、EUまたはウクライナのいずれかに設立された事業者による両国間の通過および物品運送の権利強化、運転免許証など運転者の書類承認の容易化、両当事者間の国際道路運送事業の市場参入要件の緩和に向け取り組む意向を示した。
一方、加盟国レベルでもウクライナとの二国間協議が進められており、4月にはウクライナとリトアニアとの間で物流に関する担当大臣会合を開き、リトアニア運輸省はウクライナに向けて2000トンの輸送能力を持つ列車を送るとした。また、同月にはラトビアとも会合を行い、ラトビアの港を利用したウクライナ産農産物の輸出の可能性について議論された。さらに5月には、ポーランドとウクライナの穀物輸出促進に関する共同声明が署名され、ポーランドはウクライナからの穀物の輸送貨物の検疫管理要件の見直しや国境検査場での穀物の通過保証、検疫官の増員、混雑する検疫地点の24時間稼働体制の確保などで合意されている。このほか、ドイツの担当相との間でも、6月の会合で穀物輸出に向けた恒久的な代替経路の模索に関する議論が行われている。