NZの園芸作物輸出額、過去最高を記録も野菜は減少
最終更新日:2022年8月23日
ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2020/21年度(7月〜翌6月)のニュージーランド(NZ)園芸作物全体の輸出額は66億8000万NZドル(5787億5520万円:1NZドル=86.64円(注))と過去最高を記録し(図1)、NZの総輸出額の11.1%を占めた。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の22年7月末TTS相場。
1.EU向けが最も多く、FTAにより今後拡大の見込み
輸出先別の園芸作物輸出額を見ると、EU向けが最も多く11億9100万NZドル(1031億8824万円)となっており、次いで豪州向けが9億2500万NZドル(801億4200万円)、中国向けが8億7600万NZドル(758億9664万円)となっている。日本向けは5番目に多く、7億7300万NZドル(669億7272万円)となり、主にかぼちゃやとうもろこし、野菜ジュースなどが輸出されている(表)。
NZは2022年7月1日、EUとの自由貿易協定(FTA)に大筋合意したと発表したが、NZの園芸作物輸出協会(Horticultural Export Authority)によると、発効後にキウイフルーツ、たまねぎ、リンゴなどの主要な輸出園芸作物の関税が即時撤廃されることなどから、本協定によりNZの園芸作物輸出における関税コストの約60%が削減され、年間8000万NZドル(69億3120万円)の利益を生むとしている。また、貨物輸送の混乱が続く現状を踏まえ、関税はCIF価格(運賃および保険料を含む価格)にかかるため、輸送運賃が高騰した場合、関税が撤廃された品目は、他国の商品に比べて価格優位性が発揮され輸出しやすいとしている。
2.野菜の輸出額は生鮮・加工ともに減少
品目別に見ると、キウイフルーツ(生鮮・加工)、ワイン(ブドウ加工品)、リンゴ(生鮮・加工)が園芸作物輸出額全体の8割以上を占めている。また、野菜に注目すると、20種類以上の重要な生鮮・加工野菜が輸出されており、輸出額は6億3710万NZドル(551億9834万円、前年度比12.1%減)となっている。うち、生鮮野菜は2億8290万NZドル(245億1046万円、同6.0%減)とかなりの程度減少し、加工野菜も3億5420万NZドル(306億8789万円、同16.4%減)と大幅に減少している(図2、3)。
生鮮よりも加工の輸出が多いかんしょについて、業界団体であるPotatoes New Zealandによると、生鮮かんしょは植物検疫上アクセスが制限されていることから、冷凍の加工かんしょが主に豪州などに輸出されているとしている。
3.持続可能な野菜生産システムプログラム
国内および輸出市場の拡大に向け、NZの野菜生産者は持続可能な生産に取り組んでいる。かんしょ、たまねぎ、バターナッツかぼちゃ、にんじん、葉物野菜の栽培において、作物の栄養管理を改善することを目的としたプログラムとして、持続可能な野菜システム(SVS:Sustainable Vegetable Systems)がある。
このプログラムでは、NZ第一次産業省(MPI)と産業界(例:Potatoes New Zealand、Vegetable Innovation&Research、Horticulture New Zealandなど)から750万NZドル(6億4980万円)の支援を受けており、野菜生産者が環境への影響を軽減しながら効率的に事業を行うことができるよう、環境への影響を測定するツールや持続可能な栽培方法を導入するためのツールの開発の支援などを行っている。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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