畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2022年 > 家きんのアニマルウェルフェアに関する基準とガイドラインを公表(豪州)

家きんのアニマルウェルフェアに関する基準とガイドラインを公表(豪州)

印刷ページ
 豪州独立家きん福祉委員会( The Independent Poultry Welfare Panel)(注)は2022年8月、同国の家きんに関するアニマルウェルフェアの基準とガイドラインを策定し、豪州農林水産省(DAFF)がこれを公表した。
 本基準およびガイドラインは、肉用鶏や採卵鶏のほか、エミューや七面鳥、アヒルなどの家きん飼養管理者を対象としており、別の基準やガイドラインでカバーされる輸送や食鳥処理に関する部分は除外されている。また、これらの施行が生産者などに与える追加コストなどの影響を評価した規制影響評価書も合わせて公表されている。
(注)家きんに関する新たなアニマルウェルフェア基準などの検討のため、2019年10月に開催された連邦政府および各州・準州政府の農業大臣会合において設立が決定された政府の独立機関。DAFFが事務局を務める。
 マレー・ワット農相は本基準およびガイドラインに対し、アニマルウェルフェアに関する最新の科学的根拠と広い範囲での評価を経たバランスのとれたものであるとしているほか、これらの施行は豪州の貿易相手国に対し、同国がアニマルウェルフェアの明確な基準を持つことを保証するものとしている。
 同委員会によると、基準とガイドラインに区分されていることについて、「基準」は各州・準州の法律で施行されるアニマルウェルフェアの要件であり、「ガイドライン」は望ましいアニマルウェルフェアを達成するために推奨される任意の取り組みであるとしている。主なポイントとしては、バタリーケージ(止まり木や巣箱がない多段式のケージ。ケージ内で1羽または2羽の採卵鶏を飼育する)を2036年までに段階的に廃止すること(基準)や、一定時間以上の暗期や適切な飼養密度の設定(基準およびガイドライン)などが挙げられる(表)。
表 主な内容
 豪州の王立動物虐待防止協会(RSPCA:Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals)は本基準およびガイドラインの導入を歓迎しており、これらの施行により、豪州が既にバタリーケージ廃止に動いているOECD加盟国の75%以上の国々と肩を並べることができるとしている。また、世界動物保護協会(World Animal Protection)は本公表を受け、豪州は既にバタリーケージ廃止を決定しているEU、ニュージーランドおよび米国の一部の州に遅れをとり続けていることから、36年までの期限を待たずに、可能な限り早いバタリーケージの段階的廃止となるよう、業界に要請するとしている。
 他方でビクトリア州農業者連盟(Victorian Farmers Federation)は、家きんにおけるアニマルウェルフェアの改善自体は支持するものの、内容は科学的根拠に基づく評価が無視され、特定企業の意見のみが優先されていると批判している。また、ケージ飼育の段階的な転換は、食料安全保障に大きな影響を与える可能性があるとし、(バタリーケージのほか、ケージ内に止まり木や巣箱を設置したエンリッチドケージなどによる)ケージ飼育、平飼い(鶏舎内放し飼い)、フリーレンジ(屋外放し飼い)といった現在の3つの採卵鶏飼養形態を今後も維持する必要があると訴えている。
 豪州統計局(ABS)によると、2020/21年度(7月から翌6月)は536万羽の採卵鶏がケージ飼育されており、全体の32%を占めている(図1)。また同飼養形態で採卵養鶏を経営する企業は62社で、全体の11%を占めている(図2)。
 なお、既に豪州小売大手のウールワース、コールス、アルディの各社は、自社のサプライチェーンにおいて、25年までにバタリーケージ卵の取り扱いを段階的に廃止することを公表している。
図1 採卵鶏飼養羽数(飼養形態別)
図2 採卵鶏飼養羽数(企業形態別)
 今後、連邦と州・準州政府の農業大臣は、23年初頭にまでに本基準およびガイドラインの実施方法などを検討するための議論を行う予定としている。
【調査情報部 令和4年8月31日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4394