米農務省、オーガニック畜産物に係る基準の改正案を発表(米国)
米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)は8月9日、オーガニック家畜および家きんに関する基準(OLPS:Organic Livestock and Poultry Standards)の改正案を公表した。また、同月19日には公開ヒアリングを開催し、業界団体などから意見を聴取した。今回の改正は、オーガニック食品生産法に規定される家畜および家きんの飼養基準などを明確化することで、生産者やUSDAオーガニック認証機関の認識を統一するとともに、オーガニック畜産物が一定の基準を満たすものであることを消費者に保証することを目的としている。
1 改正案の主な内容について
今回の改正案では、主に家畜および家きんのアニマルウェルフェア(AW)に関する項目を明確化している。
牛や豚などの家畜については、家畜が通常動作を行うことができるよう必要なスペースを確保することの他、乳用子牛や繁殖母豚のストール飼養の具体的な条件などを示した(図1)。また、家きんについては、屋内外における最大飼養密度、砂浴び用の砂や止まり木の設置など屋内スペースの飼養環境の具体的な条件を示すなど、牛や豚に比べてより明確化している(図2)。
その他にも、AWや個体の識別のための予防的処置や禁止する処置、輸送時の要件、と畜や安楽死の要件などを一部追加するとともに明確化している(図3)。
改正基準の施行後の猶予期間は、家きんを除く家畜の基準では1年、肉用鶏に係る基準では3年とされている。また、採卵鶏に係る基準の猶予期間のうち、基準施行前にオーガニック認証を受けた事業者の猶予期間には二つの案が用意されており、業界の意見を聴取して決定される(表)。
2 公開ヒアリングにおける業界関係者の意見
8月19日の公開ヒアリングはオンライン形式で開催され、自由参加で、意見陳述を行う場合のみ事前登録を必要とした。当日は、オーガニック農業団体、プログラム認証機関、鶏卵生産者団体を中心に意見陳述が行われた。特に、オーガニック畜産物に関わる団体や生産者が目立ち、生産者および消費者の観点に立った肯定的な声が多く見られた。一方で、鶏卵生産者団体からは、ケージフリーによる飼養方法では鶏同士の争いが生じやすく死亡率が上昇すること、野鳥やその排せつ物などへの接触を介して鳥インフルエンザの感染リスクが上昇することなどへの懸念の声も上がった(図4)。
本改正案に対するパブリックコメントは10月11日まで実施される。USDA/AMSは広く意見を集めており、これらの意見を基に、最終的な改正基準が策定される予定である。
【調査情報部 令和4年8月31日発】
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