ウクライナ産トウモロコシを巡る情勢(その6)〜オランダの動向〜
オランダ養豚・養鶏業界への影響
オランダの農協系金融機関ラボバンクは5月30日、ウクライナ情勢が家畜飼料や食肉の価格に与える影響を報告している。これによると、オランダの輸入トウモロコシの5割がウクライナ産であり、ロシアによるウクライナ侵攻後はトウモロコシの入手が困難となりオランダの養豚と養鶏業界に影響が出ている。一方、飼料用小麦については、必要量が少ない上、欧州産の入手が可能なため飼料業界への影響は小さい。
同報告によると、オランダはウクライナ産トウモロコシの輸入不足を補うために他市場からの輸入を増やし配合飼料の設計を見直す必要があるが、トウモロコシ価格の上昇に伴う豚や鶏の飼料費の上昇は避けられないとしている。
特に養豚業での飼料費の比重は大きく、肥育豚では総生産費の7割、母豚ではその5割を飼料費が占めるため、飼料費の上昇は養豚経営の利益率に直に影響する。また、豚肉の需要に対する供給はやや過多であり、生産費の増加分を肥育豚価格や豚肉価格に転嫁することは難しく、飼料費の上昇により養豚業者および豚肉加工業者の利益は圧迫されるとしている。
養鶏業でも総生産費に占める飼料費の割合は6割強であるが、鶏肉は世界的に需要が供給を上回っているため、飼料費の増加分の販売価格への転嫁は養豚業界ほど難しくないとし、鶏肉の生産費は短期的に1割の上昇が想定されている。
オランダのトウモロコシの輸入状況
オランダは2017〜21年に、年間515〜640万トンのトウモロコシを輸入し、このうちの4〜6割(年間228万〜412万トン)をウクライナ産が占める(表1)。ウクライナの他、フランス、ドイツ、ルーマニア、ブラジルなどからも輸入しているが、各国の占める割合はウクライナの3分の1以下である(表2)。
供給リスク回避のための在庫保有
ロシアによるウクライナ侵攻に加え、新型コロナウイルス感染症による中国・上海港でのコンテナ船の待機時間の長期化なども世界的な供給網に影響を及ぼしている。特定の供給者に依存度を高めることは供給リスクに繋がるため、また、他方では、こうしたリスクを回避するために在庫を増やす傾向が見られる。在庫保有は製品価格の上昇を招いており、こうした供給網の変化も価格高騰の背景にあると考えられる。
【調査情報部 令和4年9月6日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527