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口蹄疫対策として300万回分のワクチン接種などを実施(インドネシア)

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 インドネシア国内では、2022年4月に首都ジャカルタが位置するジャワ島で口蹄疫感染疑いの牛が確認された後、全国各地に感染が拡大し、肉用牛および乳用牛を中心に多くの家畜に影響を及ぼしている。以下に感染拡大の経緯をまとめる(表1。9月1日時点)。

表1 インドネシアの口蹄疫感染拡大の経緯
日付 状況
4月12日 ジャワ島の東ジャワ州で、最初の口蹄疫感染疑いの肉用牛および乳用牛が確認される。
22日 スマトラ島のアチェ州で、感染疑いの肉用牛および乳用牛が確認される。
28日 国際獣疫事務局(OIE)に報告。
5月6日 検査の結果、口蹄疫を発症していることが確認される。
  • 当初は口蹄疫ではなく、牛流行熱と診断され、動物薬の投与が行われるも、症状は改善せず、周囲の家畜に急速に感染拡大していったとされる。
  • その後、口蹄疫はジャワ島およびスマトラ島を中心に感染拡大を見せ、全国にまん延(全国34州(注1)のうち、24州で家畜への感染が確認:図1)。
  • り患畜種は主に肉用牛および乳用牛、水牛のほか、山羊や羊、豚にも感染が拡大(図2)。
  • 総計約52万頭(飼養頭数の1%)の家畜で感染が確認され、うち、約37万頭が治癒、約2万頭が処理もしくは死亡したとされる(表2)。肉用牛では、飼養頭数の2.8%に相当する42万頭で感染が確認。
  • 感染拡大のペースは6月中下旬にピークとなり、ピーク時で1日当たり約1万3000頭の感染が確認されるも、8月下旬から9月1日にかけてはおおむね1日当たり1000頭以内に収束(図3)。
  • 治癒頭数は40万頭に迫っている中で、感染拡大ペースの収束に伴い発症頭数も減少傾向(図4、5)。
 
(注1)2022年6月30日、インドネシア議会はパプア州に新たに3つの州を設置する法案を可決したが、インドネシア農業省の口蹄疫感染状況マップでは既存の34州で表示されている。
 
 
図1 インドネシアの州別口蹄疫発生状況
図2 畜種別口蹄疫感染確認頭数の割合
表2 インドネシアでの口蹄疫の状況
図3 口蹄疫感染確認頭数の推移(週別)
図4 口蹄疫発症頭数の推移(週別)
図5 口蹄疫治癒頭数(累計)の推移(週別)
 インドネシア国家防災庁は口蹄疫のまん延を抑えるため、以下の5つの主要な戦略を掲げ、対策に取り組むとしている。
(1)厳格な家畜の衛生管理
 農場内外の家畜、施設、設備、関係者の消毒を実施、移動制限などによる管理
(2)り患した家畜の治療
 家畜の免疫力および体力を回復させるための動物薬やビタミン剤を投与
(3)口蹄疫の検疫の強化
 PCRや抗原検査を利用した検疫を実施
(4)ワクチン接種の実施
 感染拡大が著しいレッドゾーンおよびイエローゾーン(注2)地域の健康な家畜を優先したワクチンの接種。グリーンゾーンでは基本的にワクチンを接種せず、衛生管理の徹底で対応
(5)口蹄疫に感染した家畜の処分
 主に感染の少ない地域でり患した家畜を対象に、口蹄疫が広範囲にまん延することを防ぐための殺処分の実施 

(注2)口蹄疫のまん延状況により、州ごとに区分管理を行い、以下の3つに分けて管理するとしている。
  •  レッドゾーン:州内の50%以上の市や地域で感染が確認されている州
  • イエローゾーン:感染が確認されているものの、州内で感染が確認されている市や地域が50%未満の州
  • グリーンゾーン:り患動物が確認されていない州

 口蹄疫まん延防止対策として有効とされているワクチン接種に関する取り組みについては、6月12日に海外からの口蹄疫ワクチン第1便がフランスから到着し、感染状況の深刻なレッドゾーンから優先的にワクチン接種が開始された。インドネシア政府は、ワクチン接種の第一段階として計300万回分のワクチンを準備しており、9月中旬までにこの接種の完了を目標としている。9月1日現在では、200万頭以上の家畜に対してワクチン接種が行われている(図6)。同国政府は、輸入ワクチンのほか、国内のメーカーとも協力して迅速に必要とされる口蹄疫ワクチンを確保するとしている。
図6 口蹄疫ワクチン接種頭数(累計)の推移(週別)
  また、同国政府は6月29日、口蹄疫の感染拡大を抑えるため、口蹄疫感染状況の確認および報告、検疫検査、消毒作業、ワクチン接種などを実施する対策班を各地域に立ち上げることを決定した。その後、7月2日には緊急事態宣言を発令し、口蹄疫対策の強化を打ち出している。同宣言では各地域の長が独自で口蹄疫対策を強化することを可能としたことに加え、口蹄疫対策で使用する費用を国家予算で補助することなどが記載されている。
【海老沼 一出 令和4年9月13日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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