ウクライナ産トウモロコシを巡る情勢(その8)〜スペインの動向〜
スペイン飼料工業連盟によると、スペインは家畜飼料原料の40〜60%を輸入しており、うち約3分の1はウクライナからの輸入とされている。
例年2〜7月は、ウクライナなど欧州を中心とした北半球の国から輸入し、8〜翌1月はブラジルなど南半球の国から輸入している。このため、ロシアによるウクライナ侵攻が北半球からのトウモロコシの輸入時期と重なったことで、飼料会社はウクライナからの穀物輸入が途絶えた場合、1カ月後にはトウモロコシが不足し、生産者は家畜を淘汰する必要があると懸念していた。
このような状況下でスペイン農業食料環境省は3月14日以降、飼料会社からの要請もあり、ウクライナ産トウモロコシの輸入減少分を補うため、アルゼンチンおよびブラジル産トウモロコシの輸入要件を一時的に緩和していた。
しかしながら、現地報道によると、スペイン国内の飼料工場では、配合飼料の販売価格が前年比45%上昇しており、南部の干ばつによる牧草の生育不良も、これを後押する一因になったとされている。
EU統計局によると、スペインは過去5年間に毎年747万〜1003万トンのトウモロコシを輸入しており、うちウクライナからの輸入量は同215万〜406万トンと輸入量全体の29〜40%を占めている(表1)。ウクライナのほかにブラジル、ルーマニア、フランスなどからもトウモロコシを輸入し、輸入先を分散しているものの、約30%のシェアが失われる影響は大きい。
22年2月末のロシアによるウクライナ侵攻後、ウクライナからのトウモロコシ輸入量は大幅に減少している(表2)。なお、黒海穀物イニシアティブの共同調整センター(9月12日公表)によると、8月31日から9月10日までに6隻の船舶がトウモロコシ計28万8000トンを積んでウクライナからスペインに向けて出港している。
【調査情報部 令和4年9月16日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527