2022/23年度の農産物輸出額、過去最高の見込み(豪州)
豪州農業資源経済科学局(ABARES)は9月6日、2022/23年度(7月〜翌6月)の農業総産出額などの見通しを公表した。
これによると、今年度の農業総産出額は、818億3186万豪ドル(7兆9491億円:1豪ドル=97.14円(注))と昨年度に次ぐ史上第2位、農畜産物輸出額は702億7337万豪ドル(6兆8264億円)と過去最高を記録すると予測されている(図1)。
ABARESは、特に輸出額の増加をけん引する事項として、世界的な食糧価格の高騰により多くの品目で輸出単価の上昇が見込まれることや、豪州国内での好天の持続などにより穀物生産量が好調に推移することを挙げている。特に、同国の2大穀物生産州であるニューサウスウェールズ州と西オーストラリア州では、冬作物の播種期に当たる5〜6月にかけて降雨に恵まれ、土壌水分量が上昇したため、小麦を中心とした冬作物で3年連続の豊作が見込まれている(図2)。
ABARESのジャレッド・グリーンビル事務局長は、「この予測は、世界経済の減速と国内でラニーニャ現象が発生する可能性を織り込んだものである」とした上で、「輸出額が700億豪ドルを超えるのは史上初であり、我が国の生産者が世界経済の不透明性を乗り越えて、世界の食料供給に大きく貢献する能力を有していることを示している」とコメントした。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年8月末TTS相場。
農業総産出額の内訳を見ると、牛肉が135億1095万豪ドル(1兆3125億円)と最大で、次いで小麦が123億5000万豪ドル(1兆1997億円)、生乳が62億23万豪ドル(6023億円)と続く(図3)。
このうち畜産は、牛群や羊群の数が、干ばつ以前(18年)の水準まで回復する一方で、国内肥育の需要は軟化し、家畜市場の取引金額は下落が見込まれることから、畜産業界の産出額に大きな変動は見られないと予測されている。
また、輸出額の内訳では、豊作が見込まれる小麦が117億1022万豪ドル(1兆1375億円)と最も多く、次いで牛肉が102億2434万豪ドル(9932億円)、綿花が70億2975万豪ドル(6829億円)と続く(図4)。
今回の予測は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によるサプライチェーンの混乱により、21/22年度産の一部が、22/23年度に算入される形となっており、特に綿花は大豊作となった昨年度の収穫・出荷の遅延分が反映され、過去最高額かつ最高順位が見込まれている。
【工藤 理帆 令和4年9月22日発】
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