タイ商務省外国貿易局(DITP)は、タイタピオカ貿易協会などの関係機関との会議において、キャッサバ製品(チップ、ペレット、でん粉、パルプなどを含む)の輸出状況などについて報告した。DITPによると、2022年の同国のキャッサバ製品の輸出量は1100万トン、輸出額は42億米ドル(6124億200万円:1米ドル=145.81円
(注1))と過去15年間の最高額に達すると予測されている。
キャッサバ製品は、ロシアのウクライナ侵攻の影響で主要輸出先である中国を中心にトウモロコシなどの代用として需要が増加している他、特に中国ではアフリカ豚熱で生産が落ちこんでいた豚の飼養頭数が回復し、飼料向け
(注2)需要などが引き続き増加している影響も考えられる。こうした背景を受け、22年上半期のキャッサバ製品輸出量は675万トンに達し、輸出額は820億バーツ(3189億8000万円:1タイバーツ=3.89円
(注3)、前年同期比35.2%増)と大幅に増加した。DITPは今後も引き続きこの傾向が続くと予測しており、海外需要の増加に対応できるよう事業者に呼びかけている。また飼料向け需要のある可能性が高いトルコやニュージーランド、サウジアラビアなどが、新たな市場として注目されていることも併せて共有された。
(注1、注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年9月末TTS相場。
(注2)中国農業農村部が、トウモロコシの代用としてキャッサバなどの飼料利用を推進するためのガイドラインを公表している。
<http://www.moa.gov.cn/gk/nszd_1/2021/202104/t20210421_6366304.htm>
一方で現地では、原料不足などの影響で稼働を停止しているキャッサバ工場があることや、生産コストの上昇などを背景に、政府による所得補償制度の保証価格の引き上げ要請があることなども報道されている。現在、キャッサバ市場価格の上昇に伴い、所得補償制度に基づく生産者への給付は行われていないが、キャッサバモザイク病
(注4)対策などの負担増加を背景に生産コストは上昇しており、市場価格上昇が生産者の所得増加に結びついていないのではないかともいわれている。
(注4)ウイルスの感染によって葉に黄化斑ができる病気で、光合成が十分に行われず、最悪の場合には作物自体が枯れてしまうことから、収穫量が大幅に減少する。タイのほかに、近隣国のベトナムやカンボジアの一部で流行が確認されている。
タイ政府ホームページには同政府報道官の談話として、22年上半期の輸出量の拡大および今後の需要の高止まり予測を受けて、関係機関との連携や、新たな市場開拓などを推進することでキャッサバ製品の輸出促進に尽力する他、生産者の収入確保を約束するとの内容も掲載されており、同国のキャッサバ製品の今後の動向が注目される。