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豪ラクタリス社、「酪農業界における行動規範」に違反との判決(豪州)

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 豪州連邦裁判所は2022年9月16日、豪州競争・消費者委員会(ACCC)(注1)が「酪農業界における行動規範(Dairy code of conduct)(注2)」に違反しているとしてラクタリス・オーストラリア社を提訴していた件について、同社の行動規範違反を認める判決を下した。
(注1)日本の公正取引委員会に相当する組織。
(注2)酪農家と乳業などの間で交わされる生乳取引の明確性と透明性の向上を目的とした行動規範(2020年1月発効)。本規範については、海外情報「豪州農業省、酪農業界の行動規範を策定、1日1日に発効(豪州)」を参照されたい。
 ACCCは21年7月、2020/21年度(7月〜翌6月)の酪農家との生乳取引に関する契約時に、同社が行動規範の複数の項目に違反したとして提訴していた。今回の判決で裁判所が違反と認定したのは、(1)同社が決められた期限までにウェブサイト上で契約書を公表しなかったこと、(2)「酪農家による重大な契約違反」に相当しない状況でも一方的に契約を終了させることができる契約内容となっていたこと、の2件となる。裁判所が認定した同社の違反詳細は以下の通り。
  1. 行動規範では、20年6月1日午後2時までに自社のウェブサイト上で標準的な契約書を公表するよう規定されている。しかしながら同社は、期限までにウェブサイト上に契約書を公表せず、個別に契約書の送付を申請した者に対してのみ、電子メールで送付していた。
  2. 行動規範では、乳業が一方的に契約を終了できる条件として、「酪農家に重大な契約違反があった場合」に限ることが規定されている。しかしながら、同社の契約書では、酪農家が加工業者や主要顧客、その他の利害関係者を公に誹謗中傷したと「同社が」判断した場合には、一方的に契約を終了できると定められていた。
 今回の判決に際しACCCは、「ラクタリス・オーストラリア社は、期限までに契約書を公表するという規定に違反したことにより、酪農家が牛乳の供給先を決めるにあたって、乳価や契約条件を比較することを困難にした。本判決は、行動規範の遵守を怠ると、裁判を含む強制措置がとられ、深刻な結果を招く可能性があることを乳業などに思い起こさせるものである」とのコメントを発表している。  一方ラクタリス・オーストラリア社は、現地取材に対し、「判決を慎重に検討し、常に行動規範を遵守するよう努める」と述べている。なお、当該年度以降、ACCCから同社に対する行動規範違反の申し立てはなされていないという。
 行動規範違反に対しては、過去に複数の企業が罰金を支払っており、現地報道によるとその額は、1万3000〜6万豪ドル(125万〜577万円:1豪ドル=96.17円(注3))程度とのことである。ラクタリス・オーストラリア社に対する罰則は、今後の審問で決定される。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の9月末TTS相場。
 

参考

【阿南 小有里 令和4年10月5日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530