今回の口頭弁論では、NPPCおよびAFBFが22年9月に連邦最高裁判所に提出した準備書面に沿って以下の点を中心に主張した。
・ 州外で生産される豚肉の販売を禁止することは州際通商の制限に当たるため、憲法に違反する。
・ 科学的、技術的、農業的な根拠を欠いた恣意(しい)的な基準である。
・ 母豚の個別飼養を禁止することはアニマルウェルフェア(AW)やバイオセキュリティをむしろ悪化させるものである。
・ 対応に要する費用は1頭当たり3500米ドル(51万335円:1米ドル=145.81円
(注2))にも及ぶと試算され、豚肉価格に転嫁せざるを得ず、近年の食肉価格の高騰に拍車をかけるものである。
・ 生産者の経済的負担を増加させるだけでなく、豚舎の無理な改築は従業員を危険にさらしかねない。
口頭弁論後にNPPCおよびAFBFが開いた記者ブリーフィングでは、連邦最高裁判所裁判官はこれらの主張に一定の理解を示した様子であったとの説明が行われた。NPPCのウォルターズ会長は「州法第12号はAW、従業員の安全、食料の安定供給、養豚経営などを脅かすものであり、養豚・豚肉産業に大きな脅威となる」と述べた。さらに、同フォーミュカ顧問は「州ごとに異なる道徳的観念を用いて異なる基準を策定することは極めて危険な行為である。ある州と別の州それぞれが最適であるとする基準同士が矛盾していた場合、養豚・豚肉業界はいずれかの州で豚肉を販売することが困難になる」と述べた。
州法第12号の動向は、養豚業界をはじめとした畜産業界、小売・外食業界、動物愛護団体、消費者団体など幅広い業界から注目を浴びている。裁判は23年2月頃、遅くとも春頃までに連邦最高裁判所による判決が下される見通しである。
(注1)カリフォルニア州法第12号をめぐる係争については、以下についても参照されたい。
母豚の飼育環境の規制強化に係るカリフォルニア州法の施行が迫る(米国)(2021年12月22日)
母豚の飼育環境規制強化に関するカリフォルニア州法の施行が停止(米国)(2022年2月10日)
また、米国におけるアニマルウェルフェアについての詳細は、
「畜産の情報」2022年8月号「米国畜産業におけるアニマルウェルフェアへの対応について」を参照されたい。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年9月末日TTS相場。