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ウクライナ産トウモロコシを巡る情勢(その10)〜干ばつの状況〜

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食料価格は低下傾向、トウモロコシ価格は堅調

 ウクライナ穀物協会は9月、8月以降のウクライナからの穀物などの輸出再開が、世界的な食料価格の低下に繋がっているとの見解を示した。国連食糧農業機関(FAO)が10月7日に公表した2022年9月の食料価格指数(注)は、前年同月の7.2ポイント増となったが、前月からは1.5ポイント減の136.3ポイントとなり、6カ月連続で低下し、食料価格が低下傾向にあることが示された。
 しかし、9月のトウモロコシ国際価格は、11月下旬以降のウクライナからの黒海を使った輸出の継続が不透明とされる中で、米国とEUの生産見通しの下方修正により供給見通しが厳しくなったことに加え、米ドル高もあり前月比0.2%高となった。
 
(注)FAOの食料価格指数(FOOD Price Index)は、穀物、油脂、牛乳・乳製品、砂糖および食肉の国際価格について、2014〜16年を100とし、食品全体の平均価格を指数化したものである。

欧州の干ばつの現状とトウモロコシ生産への影響

 欧州委員会の共同研究センターは、EUの作物生育状況や定量的な作物収量予測に関するモニタリング情報(MARS Bulletin)を毎月公開している。9月19日に公表された情報によると、欧州で夏場に発生した干ばつはほとんどの地域で収束に向かったものの、トウモロコシなど夏作物の生育改善には至らず、また、依然として高温で乾燥した気候が継続していることで、単収は減少見通しとされている。
 9月時点のトウモロコシの単収予測は、EU平均で1ヘクタール当たり6.39トンであり、過去5年平均の同7.87トンから18.8%の減少が見込まれている。また、9月時点の予測は、8月時点の予測(同6.63トン)からさらに0.24トン下方修正された。
 
 引き続き干ばつの影響が残る地域はスペイン、イタリア西部、ベネルクス諸国、ドイツ、スロベニア、クロアチア、ハンガリー、ルーマニアである。特にスペインでは、土壌が乾燥し、灌漑(かんがい)用貯水池の水位が異例の低水準にあり、その回復には例年以上の降雨が必要となるため、来期も懸念材料となっている。また、イタリアでも同様に土壌の水分が少なく、灌漑用水の利用が制限され、非常に遅く作付けされたトウモロコシは異常な高温により早期成熟が生じており、最適とは言えない条件下で収穫を待っている。
 
 このような欧州でのトウモロコシ収量の減少により飼料需給がひっ迫している。現地報道によると、異常な干ばつのため欧州のトウモロコシは、収量の大幅な減少が見込まれており、この収量減少を賄うために、EUはウクライナから1300万トン、ブラジルから500万トンのトウモロコシを輸入するとの情報もある。
 これまでブルガリア、ルーマニア、ハンガリーなどEUの主要なトウモロコシ生産国は、スペイン、イタリア、トルコなどにトウモロコシを輸出していたが、これらの国での収量減に伴う輸出の減少が見込まれていることから、トウモロコシの需要が高まっている。
【調査情報部 令和4年10月20日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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