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家畜疾病等の諸課題に向け「国家バイオセキュリティ戦略」等を策定(豪州)

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 豪州新政権は2022年8月、バイオセキュリティの諸課題に対する中長期的な方針として「国家バイオセキュリティ戦略」を策定した。隣国インドネシアでは口蹄疫の鎮静化に向け、国を挙げて様々な対策が取り組まれる中で、東南アジアではランピースキン病(注1)の感染拡大が懸念されているなど、豪州畜産を取り巻く家畜疾病の状況は厳しい状況にある。
(注1)インドネシアをはじめとする東南アジアで発生。牛に対して特徴的な皮膚結節とともに、泌乳量の減少などを引き起こし、豪州の畜産物貿易に深刻な影響を及ぼすとされている。
 本戦略には、連邦政府および関係機関がバイオセキュリティに関する理解醸成、熟練労働力の確保、持続的な投資や科学的根拠に基づくシステムの構築などについて取り組むことが規定されている。22年10月現在、豪州では経済に大きな影響を与える重要な家畜疾病の発生は確認されていないものの、インドネシアで発生している口蹄疫の国内侵入を重大な脅威としてとらえ、侵入阻止に向け監視が強化されている(注2)。また、ランピースキン病も同様に、水際対策やアジア貿易の玄関口である同国北部におけるサーベイランスをはじめとするバイオセキュリティが強化されている。
(注2)海外情報「口蹄疫の対策強化で加工度の高い食肉製品も個人輸入を禁止(豪州)」を参照されたい。
 併せて連邦政府および関係機関は、仮にこれらの疾病が国内で発生した場合の対応計画などを取り決めている。

1.豪州獣医療計画(AUSVETPLAN)
 豪州での重要な家畜疾病発生時における緊急対応に携わる関係機関向けの一連のマニュアルで、連邦政府の方針とガイドラインについてアニマルヘルス・オーストラリア(AHA:家畜衛生に関する政府機関)が策定および見直しを行っている。口蹄疫やランピースキン病を含む、約60種の家畜疾病に対応している。主な内容は以下の通り。
  • 各疾病の潜伏期間、伝染力などの説明
  • 疾病の診断方法
  • 疾病管理と根絶方針
  • ワクチン戦略
  • 推奨される検疫と家畜の移動規制

2.緊急家畜疾病対応協定(EADRA)
 AHAは、連邦および州政府が関係機関と連携し、疾病の侵入リスクを軽減するとともに、疾病が発生した場合の対応を管理する方法を定めている(図)。
図 対応計画
 このほか、ランピースキン病については、サイクロンにより蚊などのウイルス媒介昆虫がインドネシアなどから豪州に到達し、ウイルスが侵入することも想定されることから、豪州農林水産省(DAFF)の疫学担当者らは、気象状況によるウイルス侵入経路のモデル化や同国北部の牛の適切な飼養密度の研究などに取り組んでいる。また国内の酪農業界でも、パスチャライズド(低温殺菌)牛乳におけるランピースキン病ウイルスの殺菌方法の有用性などに関する研究に着手するとし、官民挙げての疾病対策に取り組んでいる。
 なおDAFFは、これら疾病の豪州への侵入リスクは、感染した食肉や家畜を介し、国内の感受性の高い家畜と接触することが最も可能性が高いとしており、今後、インドネシアの疾病発生状況が鎮静化するまでは、引き続き同国における水際での監視対策が強化されるとみられる。
【調査情報部 令和4年10月21日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530