EU加盟国とモルドバ、グルジア、ウクライナの農業担当大臣による非公式会合が、9月14〜16日にチェコのプラハで開催された。ウクライナのソルスキー農業政策・食糧大臣は、同会合で欧州委員会が5月に発表したウクライナ産穀物、家畜飼料、肥料、人道支援などのための「連帯レーン」を巡る取り組みのさらなる強化に向け、以下の計画を発表した。
- ウクライナ産穀物を途切れることなく輸送するため、EU諸国との国境に穀物搬送装置を備えたターミナル施設を建設(各ターミナルの輸送容量は年間200万トン)。この建設のためにEUの資金融資を要請。
- ウクライナの積み込みターミナルと欧州港の積み下ろしターミナルをつなぐ植物油の輸送用パイプラインの建設。この実現により年間200万トンの輸送が可能。ソルスキー大臣は、ポーランドとの間で、すでに同パイプラインの建設に関する覚書に署名しており、同建設計画は進行中。この建設のためにEUの資金融資を要請。
- EU諸国では穀物輸送のための鉄道車両や貨物車両が不足しているため、穀物運搬車を3640台、貨物トラックを6000台増やすことで年間1000万トンの穀物の追加輸送が可能になる。穀物輸送に使用する鉄道車両と貨物車両の製造に最大50%の補助を要請。
- ポーランドとドイツを経由して、ポーランドのグダニスク港、ドイツのロストック港、ハンブルク港に向かうウクライナの穀物運搬車には、欧州の鉄道路線に合うように台車を改造した鉄道車両を割り当てる必要から、走行経路と走行ダイヤの制定を提案。
ウクライナがEUに連帯強化を求める一方で、EU加盟国のルーマニアは、安価なウクライナ産穀物が市場に流れ込むことでルーマニアの生産者が倒産寸前にあるとし、「連帯レーン」経由のウクライナ産穀物の輸入停止を呼び掛けている。ルーマニアの農業協力連盟は、本来ルーマニアを通過してEU加盟国に運ばれるヒマワリ、小麦、大麦、トウモロコシなどの穀物がルーマニア市場で流通しており、国内市場価格が下落し国内生産者が打撃を受けているとしている。このため、ウクライナ産穀物がルーマニア市場へ流入しないよう、港湾での管理強化やトレーサビリティの確保などを求めている。
これに対し、EUのボイチェホフスキ農業担当欧州委員は9月26日、「ウクライナ産穀物の輸出がEU市場に破壊的あるいはマイナスの影響を与えることはない」とし、ルーマニアの要請には応えない立場を示した。