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マイコプラズマ・ボビス感染のフィードロット、牛を全頭殺処分(NZ)

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 2022年9月、ニュージーランド(NZ)南島のカンタベリー地域のフィードロットなどでマイコプラズマ・ボビス(Mycoplasma Bovis)(注1)感染牛が新たに確認された。これを受け、同国の第一次産業省(MPI)は10月13日から、同フィードロットの周辺にバイオセキュリティ法に基づく感染管理区域通知(CAN:controlled area notice)を告知し、区域内への牛の搬入および区域外への搬出の制限措置を施行した。さらにCAN内にハイリスクエリアを設定し、同エリア内の牛の殺処分を開始した。
(注1)牛に乳房炎や肺炎、関節炎などを引き起こす。感染力が強く治療は難しいため、感染牛の早期発見と淘汰によるまん延防止が主な対策となる。

 なお、同月21日までに同エリア内の2農場で新たな感染牛が確認されているが、20年7月以降は当該区域が位置するカンタベリー地域以外での感染は確認されていない(22年10月末現在)(表)。
 
表 地域別農場数
 MPIは、業界団体のデイリーNZおよびビーフ・アンド・ラム・ニュージーランドと共同で、18年5月からマイコプラズマ・ボビス根絶プログラムを実施しており(注2)、今般の感染確認前には全国で残り2戸のみが検疫管理下にあったが、根絶の一歩手前で感染が拡大した格好となった。
(注2)海外情報「新年度農業関連予算案で温室効果ガス排出削減対策を拡充(NZ)」を参照されたい。
 MPIによると、CANによる制限区域内には合計14戸の牛農家があり、うちハイリスクエリア内には当該フィードロットの他8戸の牛農家があるとしている。なお当該フィードロットでは、約1万4000頭の肉牛を飼養していたことに加え、牛の殺処分を年末まで(その他のハイリスクエリア内の牛は23年1月中旬まで)に段階的に完了させ、2〜3カ月の間農場の清掃・消毒を行った後に牛の再導入を開始する計画となっている。このような状況から、当該地域からは半年以上の長期にわたり牛肉や生乳の出荷が停止することが見込まれ、需給への影響が懸念されている。
 MPIは国内のバルクタンク内の生乳や、肉牛および乾乳牛に関するサーベイランスを継続する他、引き続き家畜や飼料、農業機械の移動などによる感染拡大経路について調査を実施するとしており、家畜の移動履歴などに関する全国家畜識別追跡(NAIT)の正確な記録への協力を農家に呼びかけている。
【調査情報部 令和4年11月2日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530