高病原性鳥インフルエンザの継続的発生と鶏卵価格の高騰(米国)
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)は11月16日、毎月更新している畜産物の需給動向の見通しを示す「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」において、鶏卵生産量を下方修正し、鶏卵卸売価格を上方修正した。鶏卵生産量の減少は高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の継続的な発生の影響を受けたものであり、鶏卵卸売価格の上昇は鶏卵供給量の減少に加え、需要増加とインフレの影響も受けているとみられている。
1 商業用採卵鶏飼養農場における高病原性鳥インフルエンザの発生状況
米国農務省動植物検疫局(USDA/APHIS)によると、商業用採卵鶏農場におけるHPAIは2022年に25件の発生が確認されており、3781万3300羽の採卵鶏が殺処分されている(表1、図1)。同年3月には最も採卵鶏飼養羽数の多いアイオワ州で4件の発生が確認され、そのうち2件では、500万羽を超える採卵鶏が殺処分された。7月から8月までの間、HPAIの発生は確認されなかったものの、9月から11月までに4件の発生が確認された(11月22日時点)。
また、このほかに商業用採卵種鶏生産農場・採卵鶏育成農場で6件の発生が確認されている(表2)。
2 採卵鶏飼養羽数と鶏卵生産量の減少
米国の採卵鶏飼養羽数は、HPAI発生の影響を受けて2022年2月から3月にかけて減少を始め、6月には3億6582万9000羽(前年同月比4.5%減)まで減少した(図2)。6月に商業用採卵鶏農場でのHPAIの発生が1件確認された以降は発生が見られなかったことや、2月から6月の発生地域の制限解除、発生農場の経営再開もあったことで7月には増加に転じ、その後も増加を続けた。しかし、9月以降に再びHPAIの発生が続き、10月時点の同羽数は3億7441万3000羽(前年同月比3.9%減)と回復に至っているとは言い難い状況にある。
これに伴い、食卓用鶏卵生産量も減少しており、6月には73億7940万個(前年同月比3.6%減)まで減少した(図3)。USDA/ERSの見通しによると、第4四半期には増加が見込まれるものの、HPAIの発生の影響から回復にはまだ時間を要する見通しとしている(図4)。
3 鶏卵価格の上昇
鶏卵供給量の減少もあり、鶏卵卸売価格が高騰している。さらに、飼料穀物価格の上昇などの投入資材の高騰のほか、インフレや需要増加の影響も価格高騰に拍車をかけている。特に第4四半期は、例年、年末にかけて需要が増加するため鶏卵卸売価格が上昇する傾向にあり、2022年第4四半期には1ダース当たり322.0セント(450.38円:1米ドル=139.87円(注)、前年同期比144.3%高)と高騰が見込まれている。なお、USDA/ERSは、23年には鶏卵供給量の増加を受けて、鶏卵卸売価格は低下するとの見通しを立てている。
(注)三菱USJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2022年11月末TTS相場。
【調査情報部 令和4年12月5日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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