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米通商代表部、カナダの乳製品関税割当について三度目の協議を要求(米国・カナダ)

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 米国通商代表部(USTR)は12月20日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づくカナダの乳製品輸入に係る関税割当(TRQ)の運用の是正を求め、カナダ政府に対し、紛争解決協議の実施を新たに要求した。米政府による本件への紛争解決協議の実施要求は三度目となる。

1 米政府の主張する懸念点

 米政府は、以下の点を懸念しており、米国産乳製品のカナダ市場へのアクセスが制限されていると主張している。

・TRQのうち85〜100%をカナダ国内加工業者に限定する配分方法はなくなったものの、TRQ申請事業者の市場シェアを基に配分量を算出しているため、その大部分を占めるカナダ国内加工業者の優位性は変わらず、他の輸入事業者、流通事業者、小売事業者、外食事業者のアクセスが制限されていること。
・TRQ申請者を過去12カ月間の活動実績を持つ事業者に限定していることから、特に新規参入者のアクセスが制限されていること。
・特段の罰則を設けずに年後半における未使用TRQの返還を認めていること。
 

2 米政府および酪農・乳業業界のコメント

 USTRや米国農務省(USDA)および米国の主要酪農・乳業団体は紛争解決協議の実施要求を公表するとともに、カナダ政府の対応を非難した。

(1)米政府のコメント
 @)USTRのタイ代表
  カナダ政府は義務を果たすどころか、USMCAの条項に整合しない酪農・乳業政策を繰り返し、
  約束されたはずの米国産乳製品の市場アクセスを拒否している。
 A)USDAのヴィルサック長官
  カナダ政府は米国の乳業者に対する貿易制限を撤廃せず、USMCAの条項に違反している。
  USDAとUSTRは米国産乳製品の市場参入に向けてあらゆる手段を講じていく。
(2)酪農・乳業業界のコメント
 @)全米生乳生産者連盟(NMPF)マルハーン会長
  米国酪農家の市場アクセス確保に向けたUSTRとUSDAの尽力に感謝する。
  カナダ政府が無視を続けるのであれば米政府は報復措置の準備をしなければならない。
 A)米国乳製品輸出協議会(USDEC)ハーデン会長
  カナダ政府がUSMCAの条項の順守を拒否しているのは非常に残念なことである。
  米政府がカナダ政府の違反行為を受け、米国酪農・乳業業界の輸出による利益を得るために
  立ち向かってくれていることに感謝する。
 B)国際乳食品協会(IDFA)ダイクス会長
  カナダ政府がUSMCAの条項を順守していないことに粘り強く対応している米政府に感謝する。
  カナダ政府は米国側の懸念を無視し続けてきた経緯があるため、再び紛争解決パネルが
  設置されると予想している。
 
【参考:これまでの経緯(図)】
 2020年7月のUSMCA発効後、同年12月に米国とカナダの両政府は紛争解決協議を行ったが平行線を辿り、21年5月には米政府の要請により、USMCA紛争解決パネルが設置された(注1)。同パネルは22年1月、カナダ政府が乳製品14品目の輸入に係るTRQのうち85〜100%をプールし、カナダ国内加工業者に配分することはUSMCAの条項に整合しないとの判断を下した(注2)
 カナダ政府は22年5月、同パネルの判断を受け、すべての乳製品の輸入に係るTRQのプールを廃止すること、業務用チーズの輸入に係るTRQの配分対象に流通事業者を追加することを発表した。しかしながら、米政府は同月、カナダ政府の運用変更が米国産乳製品のカナダ市場へのアクセスを制限していることの解決につながらないとして、紛争解決協議の実施を要求した(注3)。一方で、カナダ政府はTRQの運用はUSMCAの条項に準拠したものであるとして協議に応じない姿勢を示していた。そして今回、米政府は改めて紛争解決協議を要求するに至った。
注1:詳細は「米通商代表部、カナダの乳製品に対しUSMCA下で初のパネル設置を要請(令和3年6月2日発)」を参照されたい。
注2:詳細は「USMCA紛争解決パネル、カナダの乳製品輸入に係る関税割当の運用を協定違反と裁定(令和4年1月12日発)」を参照されたい。
注3:詳細は「米通商代表部、カナダの乳製品関税割当について2回目の協議を要請(令和4年5月30日発)」を参照されたい。

 
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【調査情報部 令和4年12月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
Tel:03-3583-9805