欧州委員会は12月16日、イタリアのサルデーニャ島で生産された豚肉について、一部地域の制限を緩和し、EU域内での流通を解禁したことを公表した。ただし、同島のその他の地域については、引き続き流通が厳しく制限される。
同島では1978年以降、アフリカ豚熱が継続している。発生の原因としては、アフリカ豚熱に汚染されていた食品の持ち込みが疑われている。
アフリカ豚熱の根絶活動は40年前から実施され、2000年代初頭には放し飼い飼育が禁止された。しかし、13年に発表されたEU食品獣医局およびイタリア保健衛生省による同島の調査報告によると、(1)無許可の放し飼い飼育の豚と野生イノシシの接触、(2)小規模農家が共同で利用する餌場などでの交差汚染、(3)生体豚の移動規制や汚染地区で飼育される豚の管理の不徹底などがアフリカ豚熱根絶の妨げの要因とされている(注)。
(注)同島での豚の飼育の歴史は古く、自家消費のために数頭の豚を放し飼いし、野生の木の実などを飼料とする伝統的な飼育方法が残っている。
このことから、15年以降に実施された根絶計画では、アフリカ豚熱発生時にその地域の放し飼いの豚を淘汰する一方、適正な方法による豚の飼育に対して補助金が支給されることとなり、サルデーニャ島におけるアフリカ豚熱の発生件数は大きく減少した。これにより、アフリカ豚熱のゾーニングを適用したサルデーニャ産豚肉のEU域内での流通が全加盟国から認められた。
欧州委員会のキリアキデス保健・食品安全担当委員は、「この結果は、EU全体にとっても素晴らしいものであり、EUの対策がアフリカ豚熱の蔓延を抑制する上で有効であることが実証された」と述べつつも、「EUでのアフリカ豚熱との闘いはまだ終わっておらず、イタリア本土を含む11の加盟国で依然として発生が報告されており、欧州委員会は、アフリカ豚熱の根絶に向けて引き続き尽力する」と引き締めた。
この発表を受けてイタリア食肉加工肉産業協会のレンティ会長は、「サルデーニャ島で実現された結果が、できるだけ早くイタリア本土で再現されることを望む。イタリア本土でのアフリカ豚熱発生により、養豚業界は輸出機会を失っており、イタリア全土でのアフリカ豚熱の根絶に向けた最大限の努力を当局に求める」と発言している。