EUのでん粉生産量のうち95%を占めるでん粉製造事業者団体であるスターチヨーロッパは、2022年12月7日、同団体傘下の会員による2021年の異性化糖の販売数量を公表し、その下げ止まりについて歓迎の意を示した。
21年の異性化糖の販売数量について同団体は、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)に関連する規制が緩和され、家庭外消費が一時的に回復したことを要因に、前年比で2.4%増加したとしている。なお20年のデータは、英国の販売量が含まれているため、英国を含まないEU27カ国ベースでの比較では、増加幅はさらに大きくなっている。
一方で、EUでは砂糖生産割当制度が廃止された17年以降、異性化糖の販売数量は低迷を続けている。制度廃止以前は、多くの関係者が生産割当廃止により砂糖は減産され、異性化糖が砂糖の甘味料市場のシェアを奪うと予想していた。しかし、このたびの公表で同団体は、異性化糖の糖類市場全体に占めるシェアが17年は5%であったものが、21年は3%強にとどまったことについて、失望感も示している。
異性化糖の低迷要因について直接的な言及はないものの、現地では生産割当制度廃止により砂糖はむしろ増産に向かい、砂糖価格が下落したことで異性化糖の価格優位性は低下し、異性化糖の減産に繋がったと見られている。
(参考)「生産割当廃止後のEUにおける砂糖および異性化糖産業の動向」(砂糖類・でん粉情報2020年10月号)参照のこと。
なお、2022年の動向について欧州委員会は、競合品目である砂糖の域内価格は大きく上昇したものの、異性化糖の原料となる穀物価格やエネルギー価格も大幅に上昇する中、異性化糖の価格も上昇したことで、結果的には同年のEUの異性化糖の製造量は前年に比べ減少したとしている。