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域外産牛肉などを供給する業者に対する森林破壊防止を目的とした規制強化規則案に合意(EU)

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 EU理事会および欧州議会は2022年12月6日、森林破壊防止を目的とした取引対象製品に対するリスク調査(デューディリジェンス:Due Diligence)義務化規則案について合意した。同規則案は、地球温暖化や生物多様性の喪失の原因とされている製品の生産拡大による森林破壊を防止することを目的とし、パーム油、牛肉、木材、コーヒー、カカオ、ゴム、大豆の7品目および皮革、チョコレート、家具、印刷紙などの派生製品が対象品目とされている。
 今回の合意に際し欧州委員会は、規則の発効から2年以内に対象品目の見直しを行うとしており、22年9月に欧州議会が対象品目にトウモロコシ、豚肉、鶏肉を加えるべきとした意見について、再度議論が行われるとみられる。トウモロコシについては、環境保護団体などが森林破壊防止に貢献すると賛成していたが、飼料業界はEUの供給不足とインフレを助長するとして反対していた。一方、豚肉、鶏肉については、森林破壊防止に寄与するものの、飼料の利用に際して高い水準での確認が要求されることで「不公平な競争」を強いられる点を懸念した欧州議会農業委員会の意向を反映し、今回の対象品目から除外されていた。
 対象製品をEU市場に供給する業者は、市場へ供給する前に、その製品が21年1月以降の森林破壊によって開発された農地で生産されていないこと、また、生産国の法令を順守していることを確認し、加盟国政府に届け出る必要がある。
 なお、各国・地域の森林破壊リスクについてはレベル分けが行われ、「高リスク国」には監視を強化する一方、「低リスク国」についてはより簡素化したデューディリジェンスが実施可能となっている。
 今回の合意を受けて、今後、EU理事会と欧州議会との間での正式な採択手続きに移ることとなる。

関係団体の反応

 EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa−Cogeca)は同日付で声明を発表し、もしトウモロコシを対象としていれば、国際的な農産物需給が不安定な状況下において、生産者に多大な財政的、事務的負担をもたらすとし、今回の対象品目から除外したことに賛意を表明した。
 環境保護団体であるグリーンピースは同日付の声明において、「森林と、森林を守るために立ち上がった人々にとって、大きな前進である」と評価した。他方で、欧州の金融機関を対象に含めなかったため、自然を破壊する企業が欧州の銀行から融資を受けることが可能な点や、トウモロコシが対象から除外された点などについて懸念を表明している。
【調査情報部 令和5年1月17日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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