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2022年の農畜産物販売収入は24%増、農業所得は7%増(米国)

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 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)は2022年12月1日、米国農業部門における2022年の所得見通しを公表した。これによると、農業現金所得(注1)は前年比26.5%増の1879億米ドル(25兆1215億円:1米ドル=133.70円(注2))、農業純所得(注3)は同13.8%増の1605億米ドル(21兆4574億円)と見込まれている(図)。
 インフレ調整後でも、農業現金所得は前年比19.1%増、農業純所得は同7.2%増と見込まれており、確定すれば、農業現金所得は過去最高水準、農業純所得は1973年以来の高い水準となる。
 
(注1)総農業現金収入(農畜産物の販売収入や政府補助金収入に、観光農園収入などの農業関連収入を加えたもの)から、農業を行うための費用および借入金の利子などの現金支出額を差し引いたもので、生産者におけるキャッシュフローの指標となる。
 
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年12月末TTS相場。
 
(注3)農業現金所得に自家消費分などの非現金収入を加えた額から、在庫相当額の変化を反映させ、減価償却費などの非現金支出額を差し引いたもの。直接現金の増減として表れない収入や支出も反映している。
農業所得の水位

鶏卵の販売収入は2倍、ブロイラーは55%増

 USDAによると、2022年の農畜産物販売収入は前年比24.3%増の5415億米ドル(72兆4029億円)と見込まれている(表1)。
 これを品目別に見ると、畜産部門では特に牛乳・乳製品(同38.1%増)、ブロイラー(同55.2%増)、鶏卵(同約2.2倍)の大幅増が見込まれている。また、作物部門ではトウモロコシ(同27.6%増)、大豆(同29.5%増)、小麦(同23.7%増)も同様に大幅増が見込まれている。収入増加の要因についてUSDAは、農畜産物の価格上昇を挙げており、これが増加額全体の9割近くを占めると試算している。また、政府から生産者への直接支払補助金については、販売価格の上昇による支払額の減少や、新型コロナウイルス対策関連の支出減少により、同36.3%減の165億米ドル(2兆2077億円)と見込んでいる。
農畜産物販売収入の品目別推移
 一方、生産費は同18.8%増の4420億米ドル(59兆971億円)と見込まれている(表2)。これは、過去最大の増加率となるが、インフレ調整後では、過去最高水準であった2012年から14年の生産費を下回る水準となっている。
 項目別に見ると、最大の支出となる飼料費(同17.4%増)をはじめとして、肥料費(同47.0%増)、農薬費(同35.6%増)、燃料費(同47.4%増)が、それぞれ大幅増と見込まれている。ただし、22年は販売価格の上昇幅が生産費の増加幅を上回っているため、農業所得の増加につながったとみられる。
生産費の項目別推移

2022年の生産者心理は改善も、23年の収益は減少と予測

 こうした結果を受け、生産者の心理にも変化が生じている。パデュー大学などは2023年1月3日、生産者の現状認識および将来見通しに関する指標である農業経済バロメーター指数(注4)を公表した。これによると、22年12月の指数は126ポイントと、前月に比べ24ポイント改善し、同年で最高の数値となった。これについて同大学商業農業センター所長のジェームズ・ミンタート氏は、「今回の認識の変化は、22年の農業所得の増加が要因となっている可能性が高く、USDAの予測結果とも一致する」と述べている。
 一方で、23年の生産者の業績見通しについて、生産費の増加と収入の減少が予測されることから、22年の見込みを下回る結果となった。同大学によると、生産者のうちほぼ半数(47%)が、農地賃借料の上昇を予測した。また、23年における最大の懸念事項として、45%の生産者が生産費の増加を、22%が金利上昇を、13%が販売価格の低下を挙げている。
 
(注4)パデュー大学などが毎月、米国内400の生産者に対し電話調査を行い、回答結果に基づいて算定。2022年12月の調査は12月5日〜9日に実施。
【小林 大祐 令和5年1月20日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9533