ギリシャで3年ぶりにアフリカ豚熱が発生(EU)
2023年2月までに、EU12カ国でアフリカ豚熱が発生
国際獣疫事務局(OIE)は1月23日、2023年1月中旬にギリシャの中央マケドニア地方で死亡していた野生イノシシについて、アフリカ豚熱(ASF)が確認されたと発表した(図)。ギリシャ農業省は、発生地域を中心とした豚の移動制限区域の設定などの防疫対策を開始した。OIEによると、ギリシャでのASFは20年4月以来、3年ぶりの発生となる。同地方はブルガリアや北マケドニアに隣接しており、今回確認されたASFは近隣諸国を経由して侵入したと考えられている。今年に入ってブルガリアおよび北マケドニアの野生イノシシでもASFが確認されている。ギリシャで初めてASFが確認されたのは、20年2月に同地方で30頭規模の豚を飼養する小規模農家であった。
欧州委員会は、2月5日までにEU12カ国で野生イノシシからASFが確認され、うち2カ国では家畜豚での発生が確認されたことを公表している(表)。また、EU域外の近隣諸国のモルドバ、北マケドニア、セルビアでもASFの発生が確認されている。
いまだASFワクチンの目処は立たず
アジア諸国でのASF発生も確認される中で、ベトナム農業農村開発省は1月31日、まもなく同国内でASFワクチンを配布するとの見通しを公表した。しかし、ドイツ養豚生産者協会(ISN)によると、同ワクチンは現在、欧州医薬庁(EMA)に申請が行われておらず、ドイツ国内での同ワクチンの使用の予定はないとされている。また、ドイツにおける家畜豚でのASFの確認は、2020年以降計7件のみであり、22年7月以降は確認されていない。このような状況では、家畜豚よりも野生イノシシへのワクチン接種の優先度が高いとみられている。ただし、野生個体群に対するワクチン接種は、安全性および有効性のテストが必須であり、これらワクチンの利用には、しばらく時間を要すると見込まれている。
【渡辺 淳一 令和5年2月10日発】
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