米農務省、近年のオーガニック農産物の需給動向を発表(米国)
米国農務省(USDA)は2月23、24日の2日間にわたり、2023年農業アウトルック・フォーラムを開催した。その中で、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)の上級エコノミストであるスコルビアンスキー氏から、近年の米国におけるオーガニック農産物の需給動向について報告が行われた。
これによると、オーガニック農業は、高付加価値化により生産者の収益性向上につながるとともに、環境負荷を低減する生産方法であるとして、USDAは生産者のオーガニック農業への移行を支援している。また、USDAによると、所得、年齢、人種・民族の異なる多様な消費者がオーガニック食品を選択する傾向があり、消費の観点からもオーガニック農産物の生産支援が必要だという。
1 オーガニック食品の小売売上額
2001年以降のオーガニック食品の小売売上額は増加傾向を示しており、01年の98億2076万米ドル(1兆3486億8500万円:1米ドル=137.33円(注1))から21年の520億1326万米ドル(7兆1429億8100万円)と、20年間で約5.3倍に増加している(図1)(注2)。直近10年間でも、平均年間成長率は7%を超える。21年は前年比3.8%減となったが、これは20年に新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受け、食品全体の家庭内消費が急増したためであり、例外的な傾向として捉えることができる。
また、21年の品目別小売売上額を見ると、果物・野菜が208億9714万米ドル(2兆8698億400万円)と40.2%を占め、乳製品・卵13.0%、飲料11.6%と続く(表1)。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年2月末TTS相場。
(注2)米国産オーガニック食品だけでなく輸入オーガニック食品も含む。
2 オーガニック農産物の生産動向
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)のオーガニック調査によると、2021年のオーガニック農産物の作付面積は363万594エーカー(146万9249ヘクタール、19年比3.2%増)とやや増加したが、牧草地は126万4685エーカー(51万1800ヘクタール、同35.9%減)と大幅に減少した(図2)。作付面積の伸び悩みと牧草地の大幅な減少は、カリフォルニア州やモンタナ州などの主要生産州の減少によるところが大きい。
一方で、21年の認証オーガニック農家戸数は1万7445戸(同5.2%増)と増加した(図3)。それらの農家がオーガニック農産物を生産するまでには少なくとも3年間を要するため、今後のオーガニック農産物の生産量増加につながる可能性もある。
また、米国産オーガニック農産物の市場規模は21年に110億米ドル(1兆5106億3000万円)を超えた(図4)。品目別に見ると、農産物ではリンゴが6億米ドル(823億9800万円、同32%増)と最大で、次いで食用トウモロコシの4億米ドル(549億3200万円、同53%増)、イチゴの3億米ドル(411億9900万円、同5%増)となった。一方、畜産物では牛乳が16億米ドル(2197億2800万円、同3%増)と最大で、次いで鶏肉の15億米ドル(2059億9500万円、同35%増)、鶏卵の12億米ドル(1647億9600万円、同38%増)となった。
3 オ−ガニック農産物の規制強化
USDAは2023年1月、オーガニック農産物の規制を強化する最終規則を発表した。本規則は、未認証の事業者を減らし、不正行為を防止すべく、USDAオーガニック認証ラベルへの信頼維持のためにUSDAの監督・執行権限を大幅に強化するものである。また、貿易仲介事業者、輸入事業者、輸出事業者を含むオーガニック農産物サプライチェーン関係者に対して、下表の証明を要求するものとなる(表2)。本規則は23年3月20日に発効し、1年間の猶予期間を経て、24年3月19日からの執行が予定されている。
【調査情報部 令和5年3月15日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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