2035年までの園芸作物戦略目標を公表(NZ)
最終更新日:2023年3月17日
ニュージーランド(NZ)政府および同国園芸関係団体などは2023年2月、35年までの園芸作物の戦略目標となる「Growing Together 2035」を策定した。本目標の達成により、園芸作物の輸出額を120億NZドル(1兆322億円:1NZドル=86.02円)(注1)まで増加させるとしている。本目標は、「Fit for a Better World」(注2)および高生産性土地に関する国家政策声明(National Policy Statement for Highly Productive Land)(注3)との整合が取られており、園芸のポストCOVID回復戦略(Horticulture Post−COVID Recovery Strategy)(注4)を念頭に策定している。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の23年2月末TTS相場。
(注2)20年7月にNZ政府が発表。第一次産業における付加価値の向上のための行程表。30年を目標年に、生産性、持続可能性、包括性に関するテーマが掲げられている。
(注3)22年10月にNZ政府が発表。食料と繊維の生産に適したNZの土地の利用可能性を確保することを目的としており、生産性の高い土地の管理方法を改善する方向性などが示されている。
(注4)20年7月に園芸業界が発表。園芸業界がコロナ後の同国経済の復興のリーダーシップを取っていくための成長、雇用、地域経済の繁栄に関する業界の主導的戦略が示されている。
具体的には、(1)同国の園芸業界における持続可能な成長、(2)価値の最適化、(3)先住民であるマオリ族の園芸業界への参画拡大、(4)科学と知識による品種開発などの実証、(5)人材育成―の5つを柱に、NZの園芸業界が世界の需要に応え、健康的な農産物供給のリーダーとなることを掲げている(表)。
例えば、(1)では、優れた養分管理手法を導入するための園芸農家の意思決定支援ツールなどの利用範囲を広げるとともに、これらの普及活動やトレーニングプログラムを確実に実施することを掲げるなど、より実効的な内容となっている。また、これら取り組みの実施を通じ、35年までの園芸作物生産に及ぼす気候変動の影響を緩和するとともに、食料安全保障の向上を図るため、より多くのモデリングを通じた「適地適作」を実現するための作物の地域別計画書を作成するとしている。そのほか、戦略的な水インフラ投資を計画し、地域の貯水プロジェクトへの共同投資を促進することも謳われている。
さらに、作物の生産拡大に伴い、労働力問題の深刻化が懸念されることから、マオリ族の園芸業界への就業支援や、学校教育における園芸プログラム導入など人材育成による労働力確保へのアプローチも、特徴的な取り組みとなっている。
NZ政府のダミアン・オコナー農相は、本目標が園芸分野の成長と持続可能性を加速させ、新規雇用の創出や輸出の増加、国内の安定的な食料供給に寄与するとしている。
【参考】
NZの園芸作物輸出額は、2022年度(2021年7月〜22年6月)に67億NZドル(5763億円)と過去最高を記録した。今後の見込みについて第一次産業省(MPI)は、海外からの堅調な需要を背景にキウイフルーツやりんごなどの栽培面積が増加し、同国産園芸作物の輸出拡大が見込まれることから、23年度には71億NZドル(6107億円)、24年度には77億NZドル(6624億円)に達するとしている(図)。
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