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生体家畜輸出団体、乳牛の生体輸出による経済効果を公表(豪州)

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 豪州の生体家畜輸出業者による業界団体であるライブコープ(Live Corp)は2023年3月、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)およびデイリー・オーストラリアと共同で、乳牛の生体輸出による経済的価値と酪農地域にもたらす効果に関する報告書を公表した。
 2020/21年度(7月〜翌6月)の豪州の生体乳牛輸出頭数は9万723頭、輸出額は2億5750万豪ドル(236億1018万円:1豪ドル=91.69円(注1))と増加傾向で推移し、中国向けの割合が高まった(図1)。また、輸出頭数全体の7割以上がビクトリア州で育成された乳牛であった(図2)。

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年3月末TTS相場。
図1 輸出額の推移
図2 地域別頭数
 雇用面では、19/20年度の豪州の酪農家のフルタイム当量(Full-Time Equivalent:FTE)(注2)は約1万6700FTEであるとしているが、輸出用乳牛飼養酪農家では、その約5%となる830FTEとなり、このうちビクトリア州が最も多く、572FTEとなっている(図3)。

(注2)1人のフルタイム社員が1週間に処理できる仕事量を表している。例えば1日8時間で週5日間勤務する場合、1年間のFTE量は2080時間(40時間/週×52週)となる。
図3 仕事率
 生体乳牛輸出は、国内の余剰雌牛の調整弁となっているほか、酪農家に副収入源を提供するなど、経営面での収入源の多角化に貢献している。実際、南オーストラリア州を除くすべての州で、輸出用乳牛を飼養する酪農家の方が扱わない酪農家と比較して収益性が高いことが統計解析モデルによって示されている(表)。輸出用乳牛を飼養する酪農家によると、若齢子牛を輸出用に販売した収益を基に、未経産牛を購入することで、牛群を効率的に拡大できるほか、酪農場における生産性などを考慮した保留乳牛の選択肢が広がるため、酪農経営に好影響を与えているとしている。
表 利益率
 また、生乳など「乳牛以外の取引収入」による収益と異なり、生体乳牛輸出は輸出過程が確立されていることから、大規模な投資を必要とせず、安定した収益を得ることができるとしている。酪農場出荷後の輸出用生体乳牛の輸出過程における輸出額(FOB)の経費構成は、飼料費が最も多く、全体の22%を占めており、次いで輸出業者利益が15%、労働費、輸送・積載費が12%などとなっている(図4)。
図4 経費構成
 このほか同報告書では、豪州の乳牛が国際市場で選ばれる理由として、優良な乳牛遺伝子資源であり、主要な家畜疾病が同国に侵入しておらず、厳格な衛生管理により飼養されているほか、幅広い気候に対応できる能力を備えており、アニマルウェルフェアにも配慮されていることなどが挙げられている。
【調査情報部 令和5年4月20日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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