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FDA、乳児用粉ミルク市場の回復力強化に向けた当面の国家戦略を策定(米国)

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 米国食品医薬品局(FDA)は3月28日、2022年に乳児用調製粉乳(以下「粉ミルク」という)の不足を招いた事態を受け、その要因を分析し、粉ミルク市場の回復力強化に向けた当面の国家戦略を公表した。

1 要因分析

(1)直接的要因

 2022年2月、米国最大手粉ミルク製造企業であるアボット社のスタージス工場(ミシガン州)で生産された粉ミルクによる乳児のクロノバクター感染を受け、同工場の操業停止と製品の自主回収に至ったことが粉ミルク不足のきっかけとなった(注1)。また、新型コロナウイルス感染症の拡大(パンデミック)やロシアによるウクライナ侵略に起因するサプライチェーンの混乱も粉ミルク不足をより深刻化させたと言える。
 さらに、粉ミルク不足の報道を受け、消費者がいわゆる「パニック買い」に走ったことも在庫不足に拍車をかけた。

 

(2)市場要因

 2021年の粉ミルク米国市場シェア(占有率)はアボット社が40%、MJN/レキット社が31%、ネスレ/ガーバー社が17%、小売大手などのプライベートブランドが11%と少数のメーカーに集中している(図1)。さらに、大手メーカーは比較的少数の工場で生産しており、操業停止したアボット社スタージス工場の生産量は同社の粉ミルク生産量の40%を占めていた。FDAは、このような競争力の欠如が施設整備などのインフラへの投資や技術革新へのインセンティブの低下をもたらしたことで、同工場における不十分な衛生管理と操業停止につながったと分析した。
 また、米国では粉ミルクは「ジャスト・イン・タイム方式(「必要なものを」「必要なときに」「必要なだけ」生産する方式)」で生産されており、在庫をほとんど持たなかったことも粉ミルク不足の要因であるとした。
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2 市場回復力強化に向けた当面の国家戦略

 FDAは粉ミルク不足に陥った要因を踏まえ、当面の国家戦略を策定した(図2)。主な内容としては、粉ミルク製造企業に対する検査の強化、粉ミルク製造企業や小売店と連携した生産動向や不足リスクの把握、生産・販売に関する申請に要する情報提供や技術的支援による新規参入の促進などが含まれる。
 その他にも非常時の輸入粉ミルクへの関税適用に関する検討、粉ミルク生産工場の新設・補改修支援の評価、WICプログラム(注2)を通じた備蓄など、FDAの所管外となる業務についても政府機関同士の連携を強化するとしている。   
 さらにFDAは、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)の意見を取り入れながら、2024年に長期国家戦略を策定・公表することとしている。

(注2)WIC(Special Supplemental Nutrition Program for Women, Infants, and Children)    妊娠中から授乳中までの低所得者層の女性、乳児、栄養上のリスクを抱える5歳までの子供の健康保護・栄養確保のために、栄養教育、母乳育児支援、保健サービス、食品クーポン券配布などの支援を行う州政府機関による補助プログラム。粉ミルクについては、州機関がメーカーとリベート契約を締結の上、当該メーカーがWIC参加者向けに販売。
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【調査情報部 令和5年4月25日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
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