デニッシュ・クラウン社、デンマークの一部と畜場を閉鎖(EU)
デンマークの食肉最大手デニッシュ・クラウン社は2023年4月20日、国内の肉豚供給頭数の減少により、同社が所有する同国内6つの豚と畜場の一つである北ユラン地域のセイビー(図1)工場の閉鎖を発表した。この閉鎖により、約800名の雇用が失われるが、閉鎖後の代替出荷先となることが見込まれるホーセンス、リングステッドおよびブランズのと畜場で新たに約450名の雇用が見込まれるとしている。同社は今年1月にも、ドイツの豚肉加工施設の閉鎖
(注1)を発表していた。
(注1)海外情報「デニッシュ・クラウン社、ドイツの豚肉加工施設を閉鎖へ(EU)」を参照されたい。
同社によると、肉豚供給頭数は過去1年間で前年比10%以上減少し、供給頭数を上回る豚肉処理能力の維持に年間3億クローネ(59億5800万円:1クローネ=19.86円)(注2)以上のコストを要していた。
肉豚供給頭数減少の要因として、生産コストの上昇による養豚農家の廃業に加え、近隣国の需要に応じ肥育用生体豚を生体重量30キログラム前後で輸出するケースもあるため、デンマーク国内で食肉として処理される頭数が減少していることを挙げている。
同社は、残り5カ所のと畜場を維持するためには、養豚農家が利益を得られるドイツ並みの価格を支払う必要があり、今回のセイビー工場の閉鎖はそのための苦渋の決断としている。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年3月末TTS相場。
デンマークの豚肉生産量は、中国向け輸出需要の増加に比例して2021年まで増加傾向で推移してきたが、22年に前年比6.6%減の161万トンとなった。(図2、図3)
同社のヴァリュールCEOは、「中国向け輸出の鈍化による豚肉生産量減少のリスクがあり、今回の閉鎖は、現在の状況を慎重かつ詳細に分析した結果に基づくもの」とし、中国向け豚肉輸出量の減少が閉鎖の一因であることを示唆した。一方で、「今後も我々の成長戦略に変わりはなく、商品価値の向上と魅力的で持続可能な食料生産を継続していきたい」と述べている。
【渡辺淳一 令和5年4月26日発】
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