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2023年のメキシコ肉牛・牛肉業界の展望(メキシコ)

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 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2月21日、2023年のメキシコ肉牛・牛肉業界の見通しを発表した。これによると、23年は新型コロナウイルス感染症の拡大(パンデミック)からの回復に伴う観光需要の増加、アジア市場の需要の高まりなどにより、牛肉生産・輸出量ともに増加すると見込まれている。以下にその概況を報告する。

1.肉牛の展望

(1)飼養頭数は3.1%増

 2023年1月時点の牛総飼養頭数は1785万頭(前年比3.1%増)とやや増加した。飼料・燃料費などの生産コストは上昇したが、輸出需要や肥育牛価格が堅調なことが生産者の増頭意欲の向上に寄与している。また、同年の子牛出生頭数についても848万頭(同1.5%増)とわずかな増加が見込まれる(表1)。干ばつの影響も肉牛主要生産州では比較的少なく、天候も安定していることが要因とされている。

(2)と畜頭数は2.2%増

 2023年のと畜頭数についても、堅調な輸出需要から693万頭(前年比2.2%増)とわずかな増加が見込まれる(表1)。現在、メキシコには食肉処理施設が1199施設あり、1カ月当たりの食肉処理能力は約130万頭とされる。しかし、そのうち輸出可能なものは連邦検査対応(TIF)施設として認可された119施設のみである。このため、業界各社は旺盛な輸出需要に対応すべく認可施設拡大に向けて投資を増やしている。

(3)生体牛輸出は48.6%増

 2022年のメキシコ生体牛輸出は87万5000頭(前年比15.6%減)とかなり大きく減少した。これは、生体輸出に比べ国内での肥育・食肉加工の収益性が高かったためである。23年については、飼養頭数の増加と主要輸出先である米国からの生体牛需要の増加により、130万頭(同48.6%増)と大幅増が見込まれる(表1)。
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2. 牛肉の展望

(1)生産量は2.1%増

 2023年の牛肉生産量はと畜頭数の増加により223万トン(前年比2.1%増)とわずかな増加が見込まれる(表2)。近年、メキシコ国内ではインフレの影響から牛肉の国内需要は減退傾向にあるが、観光需要の回復や堅調な輸出需要により、増産傾向で推移している。

(2)消費量は1.0%増

 2023年の牛肉消費量は197万トン(前年比1.0%増)とわずかな増加が見込まれる(表2)。22年のメキシコのインフレ率は14.1%と98年以来の高水準となったものの、パンデミック後の需要回復や人口増が牛肉消費をけん引するとしている。また、加工・小売業者は、安価な内臓肉(バラエティーミート)などの販路を増やし、手頃な価格での牛肉消費の拡大を目指している。パンデミック中に普及したオンラインサイトやe-コマースを通じた牛肉購入も増加している。

(3)輸入量は9.1%増

 2023年の牛肉輸入量は18万0000トン(前年比9.1%増)とかなりの程度増加が見込まれる(表2)。これは観光需要や高所得者層からの牛肉需要の高まりに加え、生体牛輸出の増加に伴う国内供給量の不足分を補填(ほてん)するものとされる。

(4)輸出量は10.0%増

 2023年の牛肉輸出量は44万トン(前年比10.0%増)とかなりの程度増加が見込まれる(表2)。これは、牛肉生産量の増加に加え、高い価格競争力およびカット技術の向上を反映したものである。

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【伊藤 瑞基 令和5年4月27日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
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