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欧州委員会、食肉の短期需給見通しを公表(EU)

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 欧州委員会は2023年3月30日、農畜産物の短期需給見通し(注1)を公表した。今回、このうち牛肉および鶏肉の概要について紹介する。
 なお、豚肉については、海外情報「22年のEU豚肉生産量は減少に転じる、23年も減少予測(EU)」を参照されたい。
 
(注1)欧州委員会は、農畜産物の短期需給見通しを年3回(3月、7月、10月)、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。

<牛肉>

 2022年の牛肉生産量は、前回10月の見通しでは前年比0.6%減と見込まれていたが、主要生産国であるドイツ(同8.3%減)、フランス(同4.4%減)およびポーランド(同2.6%減)が減産となったことを反映し、同2.4%減の671万トンに下方修正された(表1)。
 23年の牛肉生産量については、牛肉価格の高止まりと生乳価格の下落から乳用牛のと畜頭数が増加するものの、飼料や燃料などの生産コスト上昇の影響を受けて飼養頭数が減少していることから、同1.6%減の661万トンと予測される。
 なお、昨年に比べ牧草の品質が改善する場合、枝肉重量が改善する可能性もあるが、飼養頭数の減少を補うには至らないとしている。
表1 牛肉における前年比増減割合
 23年の牛肉輸出量は、EUの供給量の減少や牛肉価格の高止まりがあるものの、世界的な供給量の減少と旺盛な需要により、前年並みの54万トンと予測される。
 一方、同年の牛肉輸入量は、EU産牛肉の価格の高止まりにより、英国や南米産の輸入増が見込まれるため、前年比5.0%増の37万トンと予測される。
 また、同年の牛肉消費量は、食品価格の全体的な上昇や牛肉価格の高止まりから、同1.3%減の644万トン(1人当たり9.9キログラム)と予測される。

<家きん肉>

 2022年の家きん肉生産量は、主要生産国であるフランス(前年比6.8%減)およびイタリア(同9.2%減)の減産の影響が大きく、EU全体として同1.6%減の1307万トンとなった(表2)。
 23年の家きん肉生産量については、家きん肉価格が22年4月以降、供給量の減少と旺盛な需要にけん引され高水準となっていることや、現在の生産コストが22年から低下基調にあることから、同1.1%増の1322万トンと予測される。
表2 家きん肉における前年比増減割合
 22年の家きん肉輸出量は、域内の価格高による競争力の低下や、高病原性鳥インフルエンザによる第三国の輸入禁止措置のため、前年比8.9%減の195万トンとなった。23年の輸出量は、域内価格は軟化するものの、ブラジルなどの価格競争力が維持されることで、同5.0%減の185万トンと予測される。
 一方で、22年の家きん肉輸入量は、6月から輸入関税が無税(注2)となったウクライナ産および価格競争力の高いブラジル産の輸入の増加により、同14.7%増の82万トンとなった。23年の輸入量は、EUの堅調な需要に対応するため、同7.0%増の88万トンと予測される。
 23年の家きん肉の消費量は、全体的な食品価格の上昇を受け、牛肉や豚肉の需要が安価な家きん肉に置き換わることにより、同2.5%増の1224万トン(1人当たり23.8キログラム)と予測される。
 
(注2)海外情報「欧州委員会、ウクライナ産農産物の輸出支援策を発表(EU)」を参照されたい。
【渡辺 淳一 令和5年5月11日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527