豪州の園芸生産額は過去最高を記録、輸出もさらに増加の見込み(豪州)
最終更新日:2023年5月17日
豪州の青果園芸団体であるホート・イノベーションは2023年2月、75品目におよぶ同国における園芸品目(注1)の需給などに関する統計ハンドブックを公表した。また同年3月、豪州農業資源経済科学局(ABARES)は今後5年間(23/24〜27/28年度(注2))の同国における園芸作物の需給動向分析を公表した。本稿では両資料を基に、同国の園芸生産の見込みなどについて紹介する。
(注1)野菜、果樹、ナッツ類、花きなど。
(注2)豪州の年度は7月〜翌6月。
ホート・イノベーションの報告によると、21/22年度の園芸産業における生産・流通・輸出入などを含めた全体の流通取引総額は468億3040万豪ドル(4兆2606億円:1豪ドル=90.98円(注3))となっており、過去10年間、毎年平均して約6億8000万豪ドル(618億6640万円)増加している。また、生産量は10年間で2割以上拡大している(10年間で約85万トン増)という。この成長の要因について業界関係者は、生産面積の増加とともに、より効率的・効果的な栽培方法の実施を挙げている。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の23年4月末TTS相場。
また、ABARESは、新型コロナウイルス感染症により伸び悩んでいた園芸産品全体の輸出額について、今後は輸出先での需要回復により、27/28年度までに最大42億豪ドル(3821億円)まで増加すると見込んでいる(図1)。
一方でABARESは、中国など単一の輸出先への過度の依存はリスクが大きいとして、官民一体となって現況の輸出先への市場アクセスの維持・改善や、新規の販路開拓に向けた継続的な取り組みが重要であるとしている。
園芸品目のうち野菜に注目すると、直近の21/22年度の野菜産業全体の流通取引総額は177億900万豪ドル(1兆6112億円、前年度比13.2%増)とかなり大きく増加している(表、図2)。
野菜産業全体の流通取引総額のうち、国内生産額については55億4250万豪ドル(5042億5665万円、前年度比12.9%増)と過去最高を記録している。その中でも、葉物野菜は9420万ドル(85億7032万円、同19%増)と大幅に、トマトは8300万豪ドル(75億5134万円、同15%増)とかなり大きく増加した。また、豪州が日本の輸入先の第2位(注4)であるにんじんは2億4790万豪ドル(225億5394万円、同3.2%減)、同4位であるたまねぎは2億4870万豪ドル(226億2673万円、同22.7%増)となっている。
これら野菜の生産量の見通しでは、23/24年度でにんじんは32万7000トン(20/21年比18.9%増)、たまねぎは30万3000トン(同7.6%増)といずれも増加が見込まれている(図3)。
(注4)ベジ探「品目別・輸入先国・数量・金額・単価」の21年の国別輸入量順位。
今後の見通しに関しABARESは、これまで生産阻害要因となっていた労働力不足問題について、「太平洋豪州労働力移動計画(PALM:Pacific Australia Labour Mobility)(注5)」により改善されつつあるとし、23/24年度の園芸生産額は、果物やナッツ類の生産額増加が見込まれることで、182億豪ドル(1兆6558億円)の新記録を達成すると予測している。
(注5)豪州外務省および農林水産省が推進するもので、太平洋諸国からの季節労働者が、最長4年間、同国内で働くことができるとするもの。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530