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母豚の飼養基準などカリフォルニア州法をめぐる裁判、業界の訴えを棄却(米国)

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 母豚の飼養基準を規定し、同基準を満たさない母豚の飼養とこれらの母豚に由来する豚肉の販売を禁止するカリフォルニア州法第12号をめぐり、全米豚肉生産者協議会(NPPC)とアメリカン・ファーム・ビューロー・フェデレーション(AFBF)が起こした訴訟について、連邦最高裁判所は5月11日、この訴えを棄却する判決を下した。
 NPPCとAFBFは、同州の住民投票によって2018年11月に可決された州法第12号が州際通商(州間商取引)条項に違反するとして、施行停止を求めて提訴した。地方裁判所および控訴裁判所による棄却を経て、21年9月には連邦最高裁判所に上告し、22年10月には口頭弁論が行われていた(注1)。

(注1)カリフォルニア州法第12号をめぐる係争については、以下についても参照されたい。
  ・
母豚飼養基準などに関するカリフォルニア州法を巡る裁判、口頭弁論を開催(米国)|農畜産業振興機構 (alic.go.jp)
  ・母豚の飼育環境規制強化に関するカリフォルニア州法の施行が停止(米国)(2022年2月10日)
  ・母豚飼養基準などに関するカリフォルニア州法を巡る裁判、口頭弁論を開催(米国)|農畜産業振興機構 (alic.go.jp)

   ・米国畜産業におけるアニマルウェルフェアへの対応について

 州法第12号では、6カ月齢以上あるいは妊娠中の母豚を対象に、少なくとも1頭当たり24平方フィート(2.2平方メートル)の飼養面積を確保することとされている。NPPCとAFBFの上告趣意書によると、米国の約72%の養豚農家は、母豚が体の向きを変えられない個体ごとのストールを使用するなど、州法第12号の基準を満たしていないとされる。また、ミネソタ大学によると、これらの豚舎を基準に適合した設備に改修するための経費は全米で19〜32億米ドル(2567〜4324億円:1米ドル=135.13円(注2))に上るという。

(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年4月末日TTS相場。
 

 米国ではカリフォルニア州を含む10州で、母豚のストールや飼養面積を定めた州法が成立している(図)。これら10州のうち、オハイオ州およびミシガン州を除くといずれも飼養頭数が米国全体の1%未満の州であるため、飼養基準に関連する規定だけであれば影響は軽微であるとみられている(表)。しかし、カリフォルニア州(注3)およびマサチューセッツ州(注4)のように基準を満たさない豚肉の州内販売の禁止を規定する州法が施行されると消費者価格にまで影響が及ぶ可能性もある。米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が22年12月に公表した報告書によると、基準を満たす設備に切り替えた場合、飼養面積の確保による飼養頭数の減少、母豚をグループ飼養することによる事故率の上昇、生産効率の低下による生産コストの上昇が見込まれている。また、州内で消費される豚肉のほとんどが州外から持ち込まれるカリフォルニア州では、豚肉価格が7.7%上昇、豚肉需要が6.3%減少し、その経済的損失は3億2000万米ドル(432億4160万円)に及ぶとされる。

(注3)カリフォルニア州法第12号の販売禁止規定は未加熱の豚肉製品に適用され、ホットドッグ、ピザ、サンドイッチなどの調理済み製品、ソーセージなどの豚ひき肉製品には不適用。
(注4)マサチューセッツ州の州法第3号は2022年8月15日に施行予定とされていたが、カリフォルニア州法第12号を巡る係争を踏まえ施行を一時停止中(連邦最高裁判所の判決から30日後まで有効)。詳細については、「マサチューセッツ州、飼養基準に従わない豚肉販売禁止の州法施行を一時停止(米国)(2022年8月24日)」を参照されたい。


 
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 NPPCのヘイズ会長は今回の連邦最高裁判所の判決を受け、「非常に失望している。消費者価格は上昇し、小規模養豚農家は廃業に追い込まれ、統合が進むだろう。NPPCは養豚農家と消費者を守るために闘い続ける」との声明を発表した。
【調査情報部 令和5年5月19日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
Tel:03-3583-9805